その他の契約(全17問中1問目)

No.1

委任契約・準委任契約に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
令和6年試験 問2
  1. 売主が、売買契約の付随義務として、買主に対して、マンション専有部分内の防火戸の操作方法につき説明義務を負う場合、業務において密接な関係にある売主から委託を受け、売主と一体となって当該マンションの販売に関する一切の事務を行っていた宅地建物取引業者も、買主に対して、防火戸の操作方法について説明する信義則上の義務を負うことがある。
  2. 受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
  3. 委任契約で本人が死亡しても代理権が消滅しない旨を合意して代理人に代理権を与えた場合、本人が死亡しても代理権は消滅しない。
  4. 委任は、当事者の一方が仕事を完成することを相手方に約し、相手方がその仕事の結果に対しその報酬を支払うことを約さなければ、その効力を生じない。

正解 4

問題難易度
肢15.8%
肢212.3%
肢328.6%
肢453.3%

解説

  1. 正しい。売買契約の付随義務として、売主が買主に対して説明する義務を負う場合、その売主と密接な関係にあり、売主と一体となって勧誘、説明等から引渡しに至るまで販売に関する一切の事務を委任された宅地建物取引業者も、売主と同様に説明を行う信義則上の義務を負うことがあります(最判平17.9.16)。判例では、売主であるデベロッパーの100%出資の子会社が宅地建物取引業者である事例で、売主との一体性が認定され、売主と同様の説明義務を負うとしています。
    防火設備の一つとして重要な役割を果たし得る防火戸が室内に設置されたマンションの専有部分の販売に際し,防火戸の電源スイッチが一見してそれとは分かりにくい場所に設置され,それが切られた状態で専有部分の引渡しがされた場合において,宅地建物取引業者が,購入希望者に対する勧誘,説明等から引渡しに至るまで販売に関する一切の事務について売主から委託を受け,売主と一体となって同事務を行っていたこと,買主は,上記業者を信頼して売買契約を締結し,上記業者から専有部分の引渡しを受けたことなど判示の事情においては,上記業者には,買主に対し,防火戸の電源スイッチの位置,操作方法等について説明すべき信義則上の義務がある。
  2. 正しい。受任者は、原則として委任された事務を自ら遂行する義務を負います。復受任者を選任することができるのは、①委任者の許諾を得たとき、②やむを得ない事情があるときに限られています(民法644条の2第1項)。
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    受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
  3. 正しい。委任契約は、委任者の死亡・破産、受任者の死亡・破産・後見開始で終了します(民法653条)。この規定は任意規定と解されており、判例・通説では死後の事務を委任する契約などのように、本人が死亡しても代理権が消滅しない特約を有効としています(最判平4.9.22)。よって、本肢の場合、本人が死亡しても代理権は消滅しません。
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    委任は、次に掲げる事由によって終了する。
    一 委任者又は受任者の死亡
    二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
    三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
    委任契約の当事者である委任者と受任者は委任者の死亡によっても委任契約を終了させない旨の合意をすることができる
    Bが死亡した場合、Bの相続人は、急迫の事情の有無にかかわらず、受任者の地位を承継して委任事務を処理しなければならない。R2⑩-5-4
    委任契約において、委任者又は受任者が死亡した場合、委任契約は終了する。H13-6-1
  4. [誤り]。本肢は請負の説明です。委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる契約です(民法643条)。委任は事務処理の遂行が目的であるのに対して、請負は仕事の完成が目的です。
    委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
    不動産のような高価な財産の売買を委任する場合には、AはBに対して委任状を交付しないと、委任契約は成立しない。H14-10-1
したがって誤っている記述は[4]です。