賃貸借における損害賠償請求権

ともさん
(No.1)
【問題】
  AはBにA所有の甲建物を令和6年7月1日に賃貸し、BはAの承諾を得てCに適法に甲建物を転貸し、Cが甲建物に居住している場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。(令和2年12月  問6

【選択肢2】
Cの用法違反によって甲建物に損害が生じた場合、AはBに対して、甲建物の返還を受けた時から1年以内に損害賠償を請求しなければならない。

【答え】正しい。
  賃借人は、契約等によって定められた用法に従って、賃借物を使用収益しなければなりません(民法594条)。用法違反とは、この義務に違反した行為のことです。賃借人の用法違反により賃貸物に損害が生じた場合において、貸主が損害賠償請求をするときは、賃貸物の返還を受けた時から1年以内にしなければなりません(民法600条1項民法622条)。
  転借人Cは、賃借人Bの履行補助者(債務者の履行行為を助ける者)に当たります。履行補助者の過失は債務者の帰責事由となりますから、賃貸人Aは、転借人Cの用法違反で生じた損害の賠償を、賃借人Bに対して請求することができます(大判昭4.3.30)。

●質問事項
  不法行為による損害賠償請求権(被害者が損害及び加害者を知ったときから3年)と混同してしまいました。損害賠償請求権の消滅時効と何が違うのでしょうか?
2024.09.15 20:38
宅建女子さん
(No.2)
法的な性質がそもそも違います。

賃借人の用法違反→賃貸借契約に基づく、契約の枠内での違反

不法行為→法律全般に基づく、広範な法律違反
2024.09.15 21:04
ともさん
(No.3)
宅建女子さん  返信ありがとうございます。

法的な性質がそもそも違うというのは
民法と借地借家法のような関係という理解でよいのでしょうか?

  広範な法律違反の一部として、賃貸借契約に基づく契約の枠内での違反であれば、1年以内に損害賠償請求が必要。
  賃貸借契約に基づく契約の枠内での違反でない場合は、不法行為として法律全般に基づく、広範な法律違反として3年以内に損害賠償請求が必要(時効成立してしまうから)。  
2024.09.16 08:55
ti27004さん
(No.4)
今回の場合、AがBに損害賠償するならばどのような権利に基づいて請求するのか?という観点で説明すると、Aが請求できる方法の候補として
①債務不履行に基づく損害賠償請求
②不法行為に基づく損害賠償請求
が考えられます(民法の範囲。特別法は問題文で排除されているため除外)。①と②とが両方主張し得る場合、両方請求する場合もありますが(認められるかは別の話)、それでも別の制度の話なので検討するときも別々に検討します。

【選択肢2】の場合、Bは甲建物を賃貸借契約に基づいて適切に使用する義務があるにもかかわらず、Cの用法違反によって甲建物に損害が生じてしまう。このためAは民法606条が準用する594条に基づく借主の義務違反と言え、415条を根拠に損害賠償を請求することが出来ます。ただし、622条が準用する600条1項を理由に請求できる期間が制限されるため、解説の通りとなります。

②の話やAC間の話も気になるかもしれませんが、試験直前期で時間が惜しいうえ、長くなりそうなので一旦ここで切ります。少し時間がかかりそうなので、気にせずに先に進んでください。
2024.09.16 14:03
ti27004さん
(No.5)
前回投稿の続きです。(完全に試験範囲外の話です!!説明のためだけに書いているので、興味がわいたら試験合格後に調べてください!)
②の不法行為に基づく損害賠償請求をする場合、AがBに請求するためには一般的に
1)原告の権利または法律上保護される利益の存在
2)1に対する被告の加害行為
3)2についての被告の故意または過失
4)損害の発生および額
5)2と4との因果関係
を主張します。
(①のような債務不履行責任が追及できるなら、主張が難しい②をあえて取り上げるメリットは小さいと思います)

それぞれを詰めていくとより詳細な情報も必要になりますので、具体的な主張内容は検討できませんが1)~5)をAが主張していくことになるため、理論上主張できても負担が大きいことも考えると選択肢から除外されるでしょう。ちなみに①を主張する場合は、以下の内容を主張することが求められます(用法遵守義務違反による賃貸借契約解除に基づく建物明渡請求と、共に請求する損害賠償請求を想定)。
1)建物賃貸借契約の締結
2)1の契約に基づく賃借人への目的建物の引渡し
3)目的建物の賃貸借について用途を定めたこと
4)賃借人による目的建物賃貸借の用途の変更
5)用途変更をやめることを求める催告または用途変更を元どおりに修復することを求める催告
6)賃借人がvの催告後相当期間内に用途変更をやめなかったこと
7)5の催告後相当期間が経過したこと
8)7の期間経過後のiの契約解除の意思表示
9)損害の発生および額

個数は多いですが、今回の場合1)~3)は争わず、4)、5)も比較的証拠を出しやすいと想定されるため、Aの負担も小さくなることが見込まれます。
2024.09.16 14:48
ti27004さん
(No.6)
最後にAC間ですが、直接契約を交わしていないため①は使えないと思われますが、民法613条の転貸の効果にある「直接義務を負う」の解釈に、BC間の善管注意義務(転貸物を用法に従って利用する義務)違反を含め、Aがこの義務違反の主張を代位行使することで①で損害賠償請求できます。

余談がとても長くなりましたが、試験合格後に調べればいいことなので一回読んだら最初のコメント以外は忘れてください。
2024.09.16 15:01
ともさん
(No.7)
ti27004さん
回答ありがとうございます。

損害賠償請求は下記の2種類がある。本問題は『Cの用法違反によって甲建物に損害が生じた場合』なので、債務不履行に基づく損害賠償請求を行ったということですね。

①債務不履行に基づく損害賠償請求
②不法行為に基づく損害賠償請求
2024.09.16 18:29
ti27004さん
(No.8)
確実な基準とはいいがたいですが、イメージとして割り切ると

何らかの契約違反を理由に契約相手に請求→債務不履行
特に契約を交わしたわけではない相手に請求→不法行為(物権が根拠の可能性もありますが、その場合何らかの物権を持っていることが問題文に提示されるはずです)

となります。不当利得などの比較的マイナーな論点まで網羅するとキリがないので、直前期であることを考えるとこんなイメージでいいと思います。
2024.09.16 18:47
宅建女子さん
(No.9)
既に回答があるので、私が出る幕もないのですが、少し追加でコメントさせていただきます。

>民法と借地借家法のような関係という理解でよいのでしょうか?

契約そのものは法とは違いますね。
私は「契約の枠内での…」と言いましたが、契約というのは当事者間のおいての権利義務を生じさせることです。
これは当事者間だけでの話です。
すごく簡単にいうと「約束」です。
約束は当事者間だけに通用するものであり、万人に向けた法律とは違います。
例えば契約の中に「ペット禁止」と書かれたとして、それは世の中で「ペット禁止令」という法律が出来るわけではありません。
(契約で発生する権利義務には法的責任が伴います。契約≠法の話とは意味が異なるので区別してください。)

ところで契約において相手に対する権利を「債権」、義務を「債務」と言い換えることができます。
なので、今回で言えば、賃貸借契約において定められた用法を守る義務(債務)を果たさなかったので、「債務不履行」(=債務を履行しないこと)として損害賠償請求できるとなります。

>損害賠償請求は下記の2種類がある。本問題は『Cの用法違反によって甲建物に損害が生じた場合』

どうしてこちらに当たるのか、理由を理解したほうが覚えやすいかと思ったので。。。

ちなみに本件を別の観点で不法行為と捉えることができるか調べてみたけど、そういう事例は見当たりませんでした。
2024.09.17 11:07

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