宅建試験過去問題 令和4年試験 問27

問27

宅地建物取引業者A(消費税課税事業者)が受け取ることができる報酬についての次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。
  1. Aが、Bから売買の媒介を依頼され、Bからの特別の依頼に基づき、遠隔地への現地調査を実施した。その際、当該調査に要する特別の費用について、Bが負担することを事前に承諾していたので、Aは媒介報酬とは別に、当該調査に要した特別の費用相当額を受領することができる。
  2. Aが、居住用建物について、貸主Bから貸借の媒介を依頼され、この媒介が使用貸借に係るものである場合は、当該建物の通常の借賃をもとに報酬の限度額が定まるが、その算定に当たっては、不動産鑑定業者の鑑定評価を求めなければならない。
  3. Aが居住用建物の貸主B及び借主Cの双方から媒介の依頼を受けるに当たって、依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、借賃の1か月分の0.55倍に相当する金額以内である。ただし、媒介の依頼を受けるに当たって、依頼者から承諾を得ている場合はこの限りではなく、双方から受けることのできる報酬の合計額は借賃の1か月分の1.1倍に相当する金額を超えてもよい。
  4. Aは、土地付建物について、売主Bから媒介を依頼され、代金300万円(消費税等相当額を含み、土地代金は80万円である。)で契約を成立させた。現地調査等の費用については、通常の売買の媒介に比べ5万円(消費税等相当額を含まない。)多く要する旨、Bに対して説明し、合意の上、媒介契約を締結した。この場合、AがBから受領できる報酬の限度額は20万200円である。

正解 1

問題難易度
肢176.8%
肢24.9%
肢36.2%
肢412.1%

解説

  1. [正しい]。特別の依頼に基づき行った遠隔地への現地調査に要した特別の費用であり、事前に依頼者から費用負担についての承諾があれば、法定の報酬限度額とは別途受領することができます(解釈運用-告示第九関係)。本肢の場合、①特別の依頼、②特別の現地調査費用、③依頼者が事前に費用負担を承諾という条件を満たすので、現地調査費用を別途受領することができます。
    この規定には、宅地建物取引業者が依頼者の特別の依頼により行う遠隔地における現地調査や空家の特別な調査等に要する実費の費用に相当する額の金銭を依頼者から提供された場合にこれを受領すること等依頼者の特別の依頼により支出を要する特別の費用に相当する額の金銭で、その負担について事前に依頼者の承諾があるものを別途受領することまでも禁止する趣旨は含まれていない。
  2. 誤り。通常の借賃の算定に、不動産鑑定業者の鑑定評価を求める必要はありません。
    宅地建物の使用貸借(無償の貸し借り)の媒介では借賃がないので、当該宅地建物の通常の借賃をもとにして報酬額が決まります(報酬告示4)。この「通常の借賃」は、その宅地建物が賃貸借される場合で通常定められる適正かつ客観的な賃料を指すものであり、その算定には必要に応じて不動産鑑定業者の鑑定評価を求めることとされています(解釈運用-告示第四関係)。
    「宅地又は建物の通常の借賃」とは、当該宅地又は建物が賃貸借される場合に通常定められる適正かつ客観的な賃料を指すものであり、その算定に当たっては、必要に応じて不動産鑑定業者の鑑定評価を求めることとする。
    Aが居住用建物の貸主B及び借主Cの双方から媒介の依頼を受けるに当たって、依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、借賃の1か月分の0.55倍に相当する金額以内である。ただし、媒介の依頼を受けるに当たって、依頼者から承諾を得ている場合はこの限りではなく、双方から受けることのできる報酬の合計額は借賃の1か月分の1.1倍に相当する金額を超えてもよい。R4-27-3
    建物を住居として貸借する場合、Cは、媒介の依頼を受けるに当たってDから承諾を得ているときを除き、44,000円を超える報酬をDから受領することはできない。R3⑫-31-ア
    宅地建物取引業者が、事業用建物の貸借(権利金の授受はないものとする。)の媒介に関する報酬について、依頼者の双方から受けることのできる報酬の合計額は、借賃(消費税等相当額を含まない。)1か月分の1.1倍に相当する金額が上限であり、貸主と借主の負担の割合については特段の規制はない。R2⑫-34-3
    Aが単独で行う居住用建物の貸借の媒介に関して、Aが依頼者の一方から受けることができる報酬の上限額は、当該媒介の依頼者から報酬請求時までに承諾を得ている場合には、借賃の1.1か月分である。R2⑩-30-2
    Aが単独で行う事務所用建物の貸借の媒介に関し、Aが受ける報酬の合計額が借賃の1.1か月分以内であれば、Aは依頼者の双方からどのような割合で報酬を受けてもよく、また、依頼者の一方のみから報酬を受けることもできる。R2⑩-30-4
    宅地建物取引業者が居住用建物の貸主及び借主の双方から媒介の依頼を受けるに当たって借主から承諾を得ていなければ、借主から借賃の1.10月分の報酬を受領することはできない。H22-42-3
  3. 誤り。依頼に際して依頼者の承諾があれば、その依頼者から借賃1月分の0.55倍を超えて受けることができますが、双方から受ける報酬の合計は借賃1月分の1.1倍を超えてはいけません。
    居住用建物の媒介では、双方から受ける報酬の合計は「借賃1月分+消費税(1.1倍)」が限度となります。また、依頼を受けるにあたって依頼者からの承諾がない場合には、依頼者の一方から受けることのできる報酬額は「借賃0.5月分+消費税(0.55倍)」が限度となります(報酬告示4)。
    Aが、居住用建物について、貸主Bから貸借の媒介を依頼され、この媒介が使用貸借に係るものである場合は、当該建物の通常の借賃をもとに報酬の限度額が定まるが、その算定に当たっては、不動産鑑定業者の鑑定評価を求めなければならない。R4-27-2
    建物を住居として貸借する場合、Cは、媒介の依頼を受けるに当たってDから承諾を得ているときを除き、44,000円を超える報酬をDから受領することはできない。R3⑫-31-ア
    宅地建物取引業者が、事業用建物の貸借(権利金の授受はないものとする。)の媒介に関する報酬について、依頼者の双方から受けることのできる報酬の合計額は、借賃(消費税等相当額を含まない。)1か月分の1.1倍に相当する金額が上限であり、貸主と借主の負担の割合については特段の規制はない。R2⑫-34-3
    Aが単独で行う居住用建物の貸借の媒介に関して、Aが依頼者の一方から受けることができる報酬の上限額は、当該媒介の依頼者から報酬請求時までに承諾を得ている場合には、借賃の1.1か月分である。R2⑩-30-2
    Aが単独で行う事務所用建物の貸借の媒介に関し、Aが受ける報酬の合計額が借賃の1.1か月分以内であれば、Aは依頼者の双方からどのような割合で報酬を受けてもよく、また、依頼者の一方のみから報酬を受けることもできる。R2⑩-30-4
    宅地建物取引業者が居住用建物の貸主及び借主の双方から媒介の依頼を受けるに当たって借主から承諾を得ていなければ、借主から借賃の1.10月分の報酬を受領することはできない。H22-42-3
  4. 誤り。消費税抜きの価格が400万円以下である宅地建物の売買の媒介又は代理で、通常の売買の媒介又は代理と比較して現地調査等の費用を要する場合には、媒介又は代理契約時に依頼者にその旨を説明し、売主から承諾を受けているときに限り、その現地調査費用の実費を通常の報酬額に加算できます(報酬告示8)。ただし、この特例により計算した報酬は次の金額以内でなければなりません。
    • 媒介の場合 18万円+消費税相当額 … ①
    • 代理の場合 通常の媒介の報酬額+①
    本肢は上記の要件をすべて満たしているので、現地調査費用を加算することができます。媒介の場合には「18万円×1.10=198,000円」が限度となりますから、本肢の20万200円は違反していると判断できます。
    【参考:報酬限度額の計算】
    土地代金は80万円ですから、消費税抜きの建物代金は「(300万円-80万円)÷1.1=200万円」。消費税抜きの代金合計は280万円なので、通常の報酬額は「280万円×4%+2万円=132,000円」、加算できる現地調査費用は「180,000円-132,000円=48,000円」、通常の報酬額と現地調査費用の合計に消費税相当額を加えて「(132,000円+48,000円)×1.10=198,000円」となります。
したがって正しい記述は[1]です。