不動産鑑定評価基準(全13問中1問目)

No.1

不動産の鑑定評価に関する次の記述のうち、不動産鑑定評価基準によれば、誤っているものはどれか。
令和6年試験 問25
  1. 同一需給圏とは、一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域をいう。
  2. 対象不動産について、依頼目的に応じ対象不動産に係る価格形成要因のうち地域要因又は個別的要因について想定上の条件を設定する場合がある。
  3. 不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用を前提として把握される価格を標準として形成されるが、これを適合の原則という。
  4. 収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法であり、賃貸用不動産又は賃貸以外の事業の用に供する不動産の価格を求める場合に特に有効である。

正解 3

問題難易度
肢110.8%
肢28.6%
肢361.6%
肢419.0%

解説

  1. 正しい。同一需給圏は、一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域をいいます(鑑定評価基準6章1節Ⅱ)。不動産相互の間に代替、競争等の関係が成立し、価格形成に影響を与える範囲であり、近隣地域とそれに地域特性が類似する地域(類似地域)を含みます。住宅地でいえば、都市中心部への通勤距離が同じエリアなどがこれに該当します。
  2. 正しい。不動産の価格を形成する要因を「価格形成要因」といい、一般的要因、地域要因、個別要因に分けられます。このうち地域要因、個別要因について、想定上の条件を設定して鑑定評価を行うことがあります(鑑定評価基準5章1節Ⅱ)。条件を設定する例としては、以下のように価格を求めるケースが考えられます。
    • 都市計画で公園の設置が予定されている場合における、公園の設置後の価格
    • 対象不動産の近くで鉄道の駅が建設中の場合における、駅が実際に利用可能になった際の価格
  3. [誤り]。適合の原則ではありません。不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(最有効使用)を前提として把握される価格を標準とします。これを「最有効使用の原則」といいます(鑑定評価基準4章Ⅳ)。適合の原則とは、不動産の収益性又は快適性が最高度に発揮されるためには、当該不動産がその環境に適合していることが必要であるとする原則です(鑑定評価基準4章Ⅸ)。
  4. 正しい。収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法で、直接還元法とDCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法の2つがあります。賃貸物件や事業用物件は収益の獲得を目的とするため、収益還元法による価格評価が特に有効です(鑑定評価基準7章1節)。
したがって誤っている記述は[3]です。