所有権・共有・占有権・用益物権(全34問中8問目)
No.8
Aが購入した甲土地が他の土地に囲まれて公道に通じない土地であった場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。令和2年10月試験 問1
- 甲土地が共有物の分割によって公道に通じない土地となっていた場合には、Aは公道に至るために他の分割者の所有地を、償金を支払うことなく通行することができる。
- Aは公道に至るため甲土地を囲んでいる土地を通行する権利を有するところ、Aが自動車を所有していても、自動車による通行権が認められることはない。
- Aが、甲土地を囲んでいる土地の一部である乙土地を公道に出るための通路にする目的で賃借した後、甲土地をBに売却した場合には、乙土地の賃借権は甲土地の所有権に従たるものとして甲土地の所有権とともにBに移転する。
- Cが甲土地を囲む土地の所有権を時効により取得した場合には、AはCが時効取得した土地を公道に至るために通行することができなくなる。
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正解 1
問題難易度
肢172.0%
肢26.6%
肢316.6%
肢44.8%
肢26.6%
肢316.6%
肢44.8%
分野
科目:1 - 権利関係細目:5 - 所有権・共有・占有権・用益物権
解説
- [正しい]。分割によって公道に通じない土地が生じた場合、その土地の所有者は、他の分割者の所有する土地(分割後の残余地)にのみ道路を開設することができます。この場合には償金を要しません(民法213条1項)。
分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
- 誤り。他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地(囲繞地)を通行することができます(民法210条1項)。徒歩に留まらず自動車による通行を前提とした通行権についても、自動車による通行を認める必要性、周辺の土地の状況、他の土地の所有者が被る不利益等の事情を考慮した上で認められることがあります(最判平18.3.16)。当然に否定されるわけではないので、「認められることはない」とする本肢は誤りです。実際に上記裁判の差戻し審では自動車による通行権を認める判決をしています。
他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
自動車による通行を前提とする民法210条1項所定の通行権の成否及びその具体的内容は,公道に至るため他の土地について自動車による通行を認める必要性,周辺の土地の状況,上記通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべきである。
- 誤り。乙土地を通行するために当該土地の所有者と賃貸借契約を締結した場合、Aは賃貸借契約に基づき当該土地を通行することができます。しかし、甲土地の所有権がAからBに移転しても乙土地の賃借権は当然には移転せず、依然としてAと乙土地の所有者の間に存在します。
したがって、Bが乙土地を通行できるようにするには、賃借権の譲渡または転貸について乙土地の所有者の承諾が必要です。承諾が得られない場合は、囲繞地通行権を主張して甲土地を囲んでいる他の土地のうち、必要かつ損害が最少の部分を通行することになります。
なお、乙土地の一部に設定されていたのが甲土地のための通行地役権だった場合には、甲土地の所有権に付従して通行地役権もBに移転します(民法281条)。地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
- 誤り。通行権には次の2種類があります。
- 地役権としての通行権(通行地役権)
- 当事者同士の約定等によって設定される物権
- 袋地の所有者が囲まれている他の土地を通行できる権利(囲繞地通行権)
- 法律上当然に認められる権利
承役地の占有者が取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、地役権は、これによって消滅する。
他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
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