借地借家法(土地)(全26問中3問目)

No.3

建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約(定期借地権及び一時使用目的の借地権となる契約を除く。)に関する次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
令和4年試験 問11
  1. 借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失があった場合において、借地権者が借地権の残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造することにつき借地権設定者の承諾がない場合でも、借地権の期間の延長の効果が生ずる。
  2. 転借地権が設定されている場合において、転借地上の建物が滅失したときは、転借地権は消滅し、転借地権者(転借人)は建物を再築することができない。
  3. 借地上の建物が滅失し、借地権設定者の承諾を得て借地権者が新たに建物を築造するに当たり、借地権設定者が存続期間満了の際における借地の返還確保の目的で、残存期間を超えて存続する建物を築造しない旨の特約を借地権者と結んだとしても、この特約は無効である。
  4. 借地上の建物所有者が借地権設定者に建物買取請求権を適法に行使した場合、買取代金の支払があるまでは建物の引渡しを拒み得るとともに、これに基づく敷地の占有についても、賃料相当額を支払う必要はない。

正解 3

問題難易度
肢120.2%
肢218.0%
肢343.0%
肢418.8%

解説

  1. 誤り。借地権設定者の承諾がない場合には、借地権の延長効果は生じません。
    借地権の存続期間中に建物が滅失し、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、建物の築造について借地権設定者の承諾がある場合に限り、承諾日又は建物の築造日のいずれか早い日から最低20年間存続します(借地借家法7条1項)。
    ※築造する旨の通知から2カ月以内に異議を述べなかった場合を含む
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    借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失(借地権者又は転借地権者による取壊しを含む。以下同じ。)があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から二十年間存続する。ただし、残存期間がこれより長いとき、又は当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間による。
    借地権の存続期間が満了する前に建物が滅失し、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を建築した場合、借地権設定者が異議を述べない限り、借地権は建物が築造された日から当然に20年間存続する。H25-12-4
  2. 誤り。建物築造による存続期間の延長は、土地の転借地権者に対しても適用されます(借地借家法7条3項)。よって、転貸借の存続期間中に建物が滅失した場合、転借地権者は建物を再築することができます。
    転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする建物の築造を借地権者がする建物の築造とみなして、借地権者と借地権設定者との間について第一項の規定を適用する。
  3. [正しい]。借地上の建物が滅失した場合に、残存期間を超えて存続する建物を建築できないとする特約は、再築による存続期間の延長を認めている借地借家法の規定よりも借地人に不利なので無効となります(最判昭33.1.23)。
    借地上の建物が滅失し借地権者が新たに非堅固建物を築造するにあたり、存続期間満了の際における借地の返還を確保する目的をもつて、残存期間を超えて存続する建物を築造しない旨借地権者をして特約させた場合、右特約は借地法第一一条により無効である。
  4. 誤り。建物買取請求権を行使したときの代金の支払いと建物の引渡しは同時履行の関係にありますから、借主は代金の支払いがあるまで建物の引渡しを拒むことができます。しかし、建物の引渡しを拒んでいる間も建物の敷地を使用収益していることになるので、敷地の賃料相当額を不当利得として貸主に返還しなければなりません(最判昭39.12.4)。
    借地法第一〇条により建物の買取を請求した者が、建物の買取代金の支払を受けるまで該建物の引渡を拒み、これを占有することによつて敷地の占有を継続する場合には、右占有がもつぱら右同時履行の抗弁権行使のみを目的とするときは格別、これを自から使用しまたは第三者に使用せしめているときは、敷地の賃料相当額を不当利得として返還すべき義務がある。
したがって正しい記述は[3]です。