所有権・共有・占有権・用益物権(全34問中27問目)

No.27

次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
平成16年試験 問7
  1. 土地の所有者は、隣地から雨水が自然に流れてくることを阻止するような工作物を設置することはできない。
  2. 土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用をもって、境界を表示すべき物を設置することができる。
  3. 土地の所有者は、隣地から木の枝が境界線を越えて伸びてきたときであっても、自らこれを切断できることはない。
  4. 土地の所有者は、隣地から木の根が境界線を越えて伸びてきたときは、自らこれを切断できる。

正解 3

問題難易度
肢18.2%
肢24.4%
肢375.3%
肢412.1%

解説

  1. 正しい。自然の地形に沿って雨水が流れることは当たり前のことなので、土地の所有者は、隣地から雨水が自然に流れてくることを阻止するような工作物を設置することは禁止されています(民法214条)。人工的な排水についてはこの限りではありません。
    土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。
  2. 正しい。土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用をもって、境界を表示すべき物(境界標)を設置することができます(民法223条)。境界標とは、地理的な境界を示すために敷地の角などに設置される物理的なマーカーや記号です。
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    土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。
    土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。R3⑫-2-1
  3. [誤り]。土地の所有者は、隣地から木のが境界線を越えて伸びてきた場合には、竹木の所有者に請求して切除してもらうのが原則です。枝を切ってしまうと竹木の生育に影響があるからというのがその理由です。ただし、①竹木の所有者に催告しても相当な期間内に切除しないとき、②竹木の所有者が所在不明なとき、③急迫の事情があるときは、自らこれを切り取ることができます(民法233条1項・3項)。
    隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

    3 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
    一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
    二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
    三 急迫の事情があるとき。
    土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越える場合、その竹木の所有者にその枝を切除させることができるが、その枝を切除するよう催告したにもかかわらず相当の期間内に切除しなかったときであっても、自らその枝を切り取ることはできない。R5-2-2
  4. 正しい。土地の所有者は、隣地から木のが境界線を越えて伸びてきたときは、自らこれを切断できます(民法233条4項)。地表に現れた根は、水分や栄養素を吸収する役割を果たすことは少なく、これらの浅い根を切断しても木の生育には大きな影響を与えることはないからです。
    隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
    Aの隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、Aはその根を切り取ることができる。H21-4-3
したがって誤っている記述は[3]です。