家族法(全31問中26問目)

No.26

遺言及び遺留分に関する次の記述のうち、民法の規定によれば正しいものはどれか。
平成17年試験 問12
  1. 自筆証書による遺言をする場合、証人二人以上の立会いが必要である。
  2. 自筆証書による遺言書を自宅に保管している者が、相続の開始後、これを家庭裁判所に提出してその検認を経ることを怠り、そのままその遺言が執行された場合、その遺言書の効力は失われる。
  3. 適法な遺言をした者が、その後更に適法な遺言をした場合、前の遺言のうち後の遺言と抵触する部分は、後の遺言により取り消したものとみなされる。
  4. 法定相続人が配偶者Aと子Bだけである場合、Aに全財産を相続させるとの適法な遺言がなされた場合、Bは遺留分権利者とならない。

正解 3

問題難易度
肢111.1%
肢27.0%
肢373.1%
肢48.8%

解説

  1. 誤り。自筆証書遺言は、財産目録部分を除き、遺言者が全文、日付、氏名を自書し、これに押印して作成するもので、作成に当たり証人の立会いは必要ありません(民法968条)。作成時に証人2人以上の立会いが必要なのは公正証書遺言です(民法969条)。
  2. 誤り。検認は、遺言が法律上の要件を満たしているかどうかを裁判所が確認し、内容を明確にして遺言書の偽造や変造を防止するための手続きであり、遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。自筆証書遺言の保管者や発見者は、相続開始後、遅滞なく家庭裁判所に遺言書の検認を請求しなければならず、検認手続きを怠った場合には5万円以下の過料に処されるものの、検認を経ないで遺言書の内容が執行されたとしても適法な遺言書が無効となるわけではありません(判例)。
  3. [正しい]。遺言をした者が、その後さらに遺言をした場合、前の遺言と抵触する部分は、後の遺言により撤回(取消し)したものとみなされます(民法1023条)。たとえば、前の遺言で「甲土地をAに相続させる」としていたのに、後の遺言で「甲土地をBに相続させる」とあった場合、2つは両立しえないので、前の遺言の内容のうちその抵触する部分は撤回したことになります。
    前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
    2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
    Aが、「Aの甲土地をBに相続させる」旨の遺言をした場合で、その後甲土地を第三者Eに売却し、登記を移転したとき、その遺言は取り消されたものとみなされる。H12-10-3
  4. 誤り。相続財産を特定の者に相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)があった場合には、特段の事情がない限り、遺贈ではなく、遺言者が遺産の分割方法を指定したものとみなされます。遺留分は、遺族の生活保障を考慮して、相続財産の一定割合を一定範囲の相続人に残す制度ですから、遺留分を侵害する遺言があったときでも侵害額請求権の行使は妨げられません(最判平3.4.19)。このケースでは、全財産の2分の1が遺留分全体となり、これにBの法定相続分を乗じた4分の1がBの遺留分となります。
    Aが生前、A所有の全財産のうち甲土地についてCに相続させる旨の遺言をしていた場合には、特段の事情がない限り、遺産分割の方法が指定されたものとして、Cは甲土地の所有権を取得するのが原則である。H25-10-2
    Aは、「Aの乙建物をCに相続させる」旨の遺言をした場合で、Bの遺留分を害しないとき、これをC単独の所有に帰属させることができる。H12-10-4
したがって正しい記述は[3]です。