担保物権(全31問中16問目)

No.16

担保物権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
平成21年試験 問5
  1. 抵当権者も先取特権者も、その目的物が火災により焼失して債務者が火災保険請求権を取得した場合には、その火災保険金請求権に物上代位することができる。
  2. 先取特権も質権も、債権者と債務者との間の契約により成立する。
  3. 留置権は動産についても不動産についても成立するのに対し、先取特権は動産については成立するが不動産については成立しない。
  4. 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有する必要があるのに対し、質権者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、質物を占有する必要がある。

正解 1

問題難易度
肢168.3%
肢29.8%
肢38.4%
肢413.5%

解説

  1. [正しい]。抵当権や先取特権には物上代位性があり、その目的物が譲渡されまたは災害等により滅失し、財産的価値が売買代金、賠償金および損害保険金に移った場合、その請求権に対しても効力が及びます(民法304条民法372条)。よって、債務者が火災保険請求権を取得した場合、抵当権者と先取特権者はその火災保険請求権に物上代位することができます。
    先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
    第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。
  2. 誤り。質権は債権者と債務者との間の契約により成立する約定担保物権ですが、先取特権は法律の規定に従って生じる法定担保物権です(民法303条)。
    先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
  3. 誤り。先取特権は不動産についても成立します(民法325条)。留置権は本肢の記述どおり、動産についても不動産についても成立します。
    次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。
  4. 誤り。留置権者・質権者ともに、善良な管理者の注意をもって占有する必要があります(民法298条1項民法350条)。
    留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。
    第二百九十六条から第三百条まで及び第三百四条の規定は、質権について準用する。
したがって正しい記述は[1]です。