賃貸借契約(全20問中11問目)

No.11

AB間で、Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲建物につき、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約(負担付使用貸借契約ではない)を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
平成27年試験 問3
  1. Bが死亡した場合、①では契約は終了しないが、②では契約が終了する。
  2. Bは、①では、甲建物のAの負担に属する必要費を支出したときは、Aに対しその償還を請求することができるが、②では、甲建物の通常の必要費を負担しなければならない。
  3. AB間の契約は、①では諾成契約であり、②でも諾成契約である。
  4. AはBに対して、甲建物の契約不適合について、①では担保責任を負う場合があるが、②では担保責任を負わない。

正解 4

問題難易度
肢111.5%
肢211.2%
肢318.6%
肢458.7%

解説

  1. 正しい。賃貸借契約によって発生した賃借権は債権の一種で、相続の対象となります。一方、使用貸借契約については民法597条3項において「使用貸借は、借主の死亡によって終了する。」と規定されています。
    使用貸借は、借主の死亡によって終了する。
  2. 正しい。賃貸借契約においては、賃借人は、賃貸人に対して、賃借人自身が負担した必要費について直ちにその償還を請求することができます(民法608条1項)。
    一方、使用貸借における必要費については、借主が負担します(民法595条1項)。
    賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
    借主は、借用物の通常の必要費を負担する。
  3. 正しい。①賃貸借契約、②使用貸借契約ともに当事者の合意のみ(物の引渡しは要件ではない)によって成立する「諾成契約」です(民法601条民法593条)。
    ※使用貸借については民法改正により諾成契約に変更されました。以前は要物契約でした。
    賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
    使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
    甲土地が公道に通じているか否かにかかわらず、他人が所有している土地を通行するために当該土地の所有者と賃貸借契約を締結した場合、Aは当該土地を通行することができる。H25-3-3
  4. [誤り]。有償契約である賃貸借には売買契約の規定が準用されるため、貸主は甲建物の契約不適合について担保責任を負います(民法559条民法562~564条)。
    一方、使用貸借には同じ無償契約である贈与の規定が準用され、契約の目的物を特定したときの状態(現状有姿)で引き渡せばよいとされています。つまり、特定したときの物の状態が契約内容となります。特定した時の目的物にキズや欠陥があっても、そのことについて担保責任を負うことはありませんが、その後引き渡しまでに破損があるなどして契約内容に適合しなくなった場合、貸主は担保責任を負います。よって、担保責任を負わないわけではありません(民法596条民法551条)。
    この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
    第五百五十一条の規定は、使用貸借について準用する。
    贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する。
    2  負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。
したがって誤っている記述は[4]です。