家族法(全31問中11問目)

No.11

遺産分割に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
令和元年試験 問6
  1. 被相続人は、遺言によって遺産分割を禁止することはできず、共同相続人は、遺産分割協議によって遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
  2. 共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて遺産分割協議を成立させることができる。
  3. 遺産に属する預貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、共同相続人は、その持分に応じて、単独で預貯金債権に関する権利を行使することができる。
  4. 遺産の分割は、共同相続人の遺産分割協議が成立した時から効力を生ずるが、第三者の権利を害することはできない。

正解 2

問題難易度
肢18.8%
肢262.6%
肢310.0%
肢418.6%

解説

  1. 誤り。遺言により、相続開始から5年を超えない期間を定めて、その期間は遺産分割を禁止することができます(民法908条1項)。
    被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
  2. [正しい]。既に遺産分割協議が成立していても、その全部又は一部を共同相続人全員の合意により解除した上、改めて遺産分割協議を成立させることができます(最判平2.9.7)。
    共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて分割協議を成立させることができる。
  3. 誤り。被相続人の有していた債権は相続開始と同時に、法定相続分の割合で共同相続人に承継されますが、預貯金債権は例外的に遺産分割の対象とされているため、相続開始と同時に当然に分割されるわけではありません(最判平28.12.19)。
    よって、遺産分割協議が成立する前は、原則として被相続人の預貯金を相続人の一人が単独で引き出すことはできません。ただし、民法改正で預貯金払戻し制度が創設され、遺産に属する預貯金債権の一部を単独で行使できるようになりました(民法909条の2)。
    なお、判例では、預貯金債権以外の可分債権は相続分に応じて当然に分割されるとしています(最判平29.4.8)。
    共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となる。
    各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。
    相続人数人ある場合において、相続財産中に金銭の他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解すべきである。
  4. 誤り。遺産分割協議が成立した場合、その効力は相続開始時点に遡って生じます(民法909条)。つまり、相続人は相続財産を相続開始時に取得したことになります。後半の第三者の権利を害することはできないという部分は適切です。
    遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
    遺産分割の効力は、相続開始の時にさかのぼって生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。R5-1-3
したがって正しい記述は[2]です。