所有権・共有・占有権・用益物権(全34問中10問目)
No.10
所有権の移転又は取得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。平成29年試験 問2
- Aの所有する甲土地をBが時効取得した場合、Bが甲土地の所有権を取得するのは、取得時効の完成時である。
- Aを売主、Bを買主としてCの所有する乙建物の売買契約が締結された場合、BがAの無権利について善意無過失であれば、AB間で売買契約が成立した時点で、Bは乙建物の所有権を取得する。
- Aを売主、Bを買主として、丙土地の売買契約が締結され、代金の完済までは丙土地の所有権は移転しないとの特約が付された場合であっても、当該売買契約締結の時点で丙土地の所有権はBに移転する。
- AがBに丁土地を売却したが、AがBの強迫を理由に売買契約を取り消した場合、丁土地の所有権はAに復帰し、初めからBに移転しなかったことになる。
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正解 4
問題難易度
肢19.4%
肢213.3%
肢37.8%
肢469.5%
肢213.3%
肢37.8%
肢469.5%
分野
科目:1 - 権利関係細目:5 - 所有権・共有・占有権・用益物権
解説
- 誤り。時効の効果は時効の起算日にさかのぼって生じます。取得時効であれば占有を開始した日、消滅時効であれば起算事由が生じた日です(民法144条)。したがって、Bは取得時効の完成時ではなく、占有を開始した日に所有権を取得したことになります。
時効の効力は、その起算日にさかのぼる。
- 誤り。乙建物の所有者はAではなくCです。不動産取引には即時取得※の制度はありませんから、無権利者であるAと売買契約をしたBが乙建物の所有権を取得することはできません。ここでBの善意無過失は関係ありません。
本肢のケースは他人物売買となり、売主AにはCから乙建物を取得して買主Bに引き渡す義務が生じます。他人物売買では売主が真の所有者から売買目的物の所有権を取得した際に、当然に買主に所有権が移転します。よって、もし売主AがCから所有権の譲渡を受けたときは、買主Bはそのときに所有権を取得することになります(最判昭40.11.19)。
※動産の場合には即時取得という制度があり、取引行為によって善意無過失に動産の占有を開始した場合には所有権を取得することができます。しかし、不動産取引には適用がありません。売主が第三者所有の特定物を売り渡した後右物件の所有権を取得した場合には、買主への所有権移転の時期・方法について特段の約定がないかぎり、右物件の所有権は、なんらの意思表示がなくても、売主の所有権取得と同時に買主に移転する。
- 誤り。原則として所有権は売買契約締結時に移転します(民法176条)。ただし、判例では所有権の移転が将来なされる特約がある場合にはそれに従うとしています(最判昭33.6.20)。本肢では「代金の完済までは丙土地の所有権は移転しない」特約があるため、所有権の移転は代金の完済時となります。
物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
売主の所有に属する特定物を目的とする売買においては、特にその所有権の移転が将来なされるべき約旨に出たものでないかぎり、買主に対し直ちに所有権移転の効力を生ずるものと解するを相当とする
- [正しい]。契約を取り消した場合、その契約は初めから無効であったものとみなされます。契約の効力が生じていないことになるので、契約前の状態に戻って、丁土地の所有権はAに復帰します(民法121条)。
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
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