制限行為能力者(全10問中1問目)

No.1

未成年者Aが、法定代理人Bの同意を得ずに、Cから甲建物を買い受ける契約(以下この問において「本件売買契約」という。)を締結した場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、Aに処分を許された財産はなく、Aは、営業を許されてはいないものとする。
令和5年試験 問8
  1. AがBの同意を得ずに制限行為能力を理由として本件売買契約を取り消した場合、Bは、自己が本件売買契約の取消しに同意していないことを理由に、Aの当該取消しの意思表示を取り消すことができる。
  2. 本件売買契約締結時にAが未成年者であることにつきCが善意無過失であった場合、Bは、Aの制限行為能力を理由として、本件売買契約を取り消すことはできない。
  3. 本件売買契約につき、取消しがなされないままAが成年に達した場合、本件売買契約についてBが反対していたとしても、自らが取消権を有すると知ったAは、本件売買契約を追認することができ、追認後は本件売買契約を取り消すことはできなくなる。
  4. 本件売買契約につき、Bが追認しないまま、Aが成年に達する前にBの同意を得ずに甲建物をDに売却した場合、BがDへの売却について追認していないときでも、Aは制限行為能力を理由として、本件売買契約を取り消すことはできなくなる。

正解 3

問題難易度
肢117.5%
肢212.2%
肢358.4%
肢411.9%

解説

  1. 誤り。未成年者の契約など、制限行為能力を理由として取り消すことができる行為は、本人・代理人・同意をすることができる者が取り消すことができます(民法120条1項)。したがって、未成年者本人が単独で確定的に当該行為を取り消すことができ、法定代理人の同意を要しません。このため、法定代理人Bは取消しに同意していないからという理由で、未成年者Aが行った取消しの意思表示を取り消すことはできません。
    行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
  2. 誤り。未成年者の法律行為の相手方が善意無過失であったとしても、未成年者であることを理由に契約を取り消すことができます。制限行為能力者の取消しでは、第三者の保護規定がありません。制限行為能力者の保護は、取引の安全の保護よりも優先度が高いためです(民法5条)。
    本件売買契約につき、Bが追認しないまま、Aが成年に達する前にBの同意を得ずに甲建物をDに売却した場合、BがDへの売却について追認していないときでも、Aは制限行為能力を理由として、本件売買契約を取り消すことはできなくなる。R5-8-4
    未成年者が、その法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は、無効となる。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りではない。H20-1-2
  3. [正しい]。制限行為能力者本人による追認は、未成年者が成年者になるなど制限行為能力者ではなくなり、取消権を有することを知った後でなければすることができません(民法124条1項)。この条件を満たした者が追認した行為は、それ以後取り消すことできません(民法122条)。
    取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。
    取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。
  4. 誤り。未成年者が行った法律行為は、本人又は法定代理人が取り消すことができます(民法5条)。法定代理人が追認していなければ、本人Aも取り消すことができます。
    本件売買契約締結時にAが未成年者であることにつきCが善意無過失であった場合、Bは、Aの制限行為能力を理由として、本件売買契約を取り消すことはできない。R5-8-2
    未成年者が、その法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は、無効となる。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りではない。H20-1-2
したがって正しい記述は[3]です。