宅建試験過去問題 令和5年試験 問4

問4

AがBに対して貸金債権である甲債権を、BがAに対して貸金債権である乙債権をそれぞれ有している場合において、民法の規定及び判例によれば、次のアからエまでの記述のうち、Aが一方的な意思表示により甲債権と乙債権とを対当額にて相殺できないものを全て掲げたものは、次の1から4のうちどれか。なお、いずれの債権も相殺を禁止し又は制限する旨の意思表示はされていないものとする。
  1. 弁済期の定めのない甲債権と、弁済期到来前に、AがBに対して期限の利益を放棄する旨の意思表示をした乙債権
  2. 弁済期が到来している甲債権と、弁済期の定めのない乙債権
  3. 弁済期の定めのない甲債権と、弁済期が到来している乙債権
  4. 弁済期が到来していない甲債権と、弁済期が到来している乙債権
  1. ア、イ、ウ
  2. イ、ウ
  3. ウ、エ

正解 4

問題難易度
肢113.1%
肢215.1%
肢319.0%
肢452.8%

解説

相殺(そうさい)は、2人が互いに同じ種類の債務を有しているときに、一方からの意思表示により、対当額の債務を消滅させることができる制度です。たとえば、AがBに10万円を貸している、AはBから20万円を借りているという場合に、当事者双方は相殺をすることで10万円分の債権債務を消滅させることができます。

相殺をするのに適した状態を「相殺適状」といい、次の3つすべてを満たしていることを言います。
  1. 2人が互いに同じ種類の債務を有している
  2. 自働債権の弁済期が到来している
  3. 両債権が性質上相殺できないものではない
相殺の意思表示をする側が有している債権は「自働債権」、相殺される側の債権は「受働債権」と呼ばれます。本問では、AがBに対して相殺の意思表示をしようとしているので、甲債権が自働債権、乙債権が受働債権です。
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本問は両債務が金銭債権であり、相殺は制限されていませんから、自働債権が弁済期であるかどうかだけで相殺適状にあるかどうかを判断することができます。
  1. 相殺できる。弁済期の定めがない場合はいつでも弁済を請求できるので、債権が成立したと同時に弁済期に入ります。自働債権には弁済期の定めがなく、弁済期が到来しているので相殺できます。
  2. 相殺できる。自働債権の弁済期が到来しているので相殺できます。
  3. 相殺できる。自働債権には弁済期の定めがなく、弁済期が到来しているので相殺できます。
  4. 相殺できない。自働債権の弁済期が到来していないので相殺できません。
したがって相殺できないものは「エ」です。