不法行為・事務管理(全16問中4問目)

No.4

Aは、隣人Bの留守中に台風が接近して、屋根の一部が壊れていたB宅に甚大な被害が生じる差し迫ったおそれがあったため、Bからの依頼なくB宅の屋根を修理した。この場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
平成30年試験 問5
  1. Aは、Bに対して、特段の事情がない限り、B宅の屋根を修理したことについて報酬を請求することができない。
  2. Aは、Bからの請求があったときには、いつでも、本件事務処理の状況をBに報告しなければならない。
  3. Aは、B宅の屋根を善良な管理者の注意をもって修理しなければならない。
  4. AによるB宅の屋根の修理が、Bの意思に反することなく行われた場合、AはBに対し、Aが支出した有益な費用全額の償還を請求することができる。

正解 3

問題難易度
肢126.9%
肢28.1%
肢351.8%
肢413.2%

解説

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  1. 正しい。義務なく他人のために事務の管理を行うことを「事務管理」といいます。原則として事務管理は無償ですので、AはBに対して報酬を請求することはできません。
  2. 正しい。事務管理をおこなったもの(A)は、本人(B)からの請求があった場合、いつでも事務処理の状況を報告しなければいけません(民法701条民法645条)。
    第六百四十五条から第六百四十七条までの規定は、事務管理について準用する。
    受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
  3. [誤り]。事務管理者には、原則として善管注意義務があります(通説)。ただし、急迫の危害を免れるための事務管理のときには、悪意または重大な過失がある場合のみ損害を賠償する責任を負います(民法698条)。善管注意義務がある場合には軽過失でも債務不履行となりますが、急迫の事情があるときには軽過失であれば免責されるので善管注意義務より軽い注意義務となります。
    本肢は、「甚大な被害が生じる差し迫ったおそれがあった」ので急迫の危害を免れるために行った事務管理に該当し、事務管理者に善管注意義務までは課されません。
    管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。
  4. 正しい。事務管理が本人の意思に反することなく行われた場合、事務管理者(A)は本人(B)に対して支出した有益費全額を請求することができます(民法702条1項)。
    管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。
    倒壊しそうなA所有の建物や工作物について、Aが倒壊防止の措置をとらないため、Aの隣に住むBがAのために最小限度の緊急措置をとったとしても、Aの承諾がなければ、Bはその費用をAに請求することはできない。H25-8-1
    BはDに200万円の借金があり、その返済に困っているのを見かねたAが、Bから頼まれたわけではないが、Bに代わってDに対して借金の返済を行った。Bの意思に反する弁済ではないとして、AがDに支払った200万円につき、AがBに対して支払いを求める場合。H23-8-4
したがって誤っている記述は[3]です。