債権総則(全37問中18問目)

No.18

債務不履行に基づく損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
平成24年試験 問8
  1. AがBと契約を締結する前に、信義則上の説明義務に違反して契約締結の判断に重要な影響を与える情報をBに提供しなかった場合、Bが契約を締結したことにより被った損害につき、Aは、不法行為による賠償責任を負うことはあっても、債務不履行による賠償責任を負うことはない。
  2. AB間の利息付金銭消費貸借契約において、利率に関する定めがない場合、借主Bが債務不履行に陥ったことによりAがBに対して請求することができる遅延損害金は、年3パーセントの利率により算出する。
  3. AB間でB所有の甲不動産の売買契約を締結した後、Bが甲不動産をCに二重譲渡してCが登記を具備した場合、AはBに対して債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができる。
  4. AB間の金銭消費貸借契約において、借主Bは当該契約に基づく金銭の返済をCからBに支払われる売掛代金で予定していたが、その入金がなかった(Bの責めに帰すべき事由はない。)ため、返済期間が経過してしまった場合、Bは債務不履行に陥らず、Aに対して遅延損害金の支払義務を負わない。

正解 4

問題難易度
肢117.4%
肢26.8%
肢36.8%
肢469.0%

解説

  1. 正しい。本肢の場合、契約上の債務不履行ではなく契約前の事由に基づく損害なので、債務不履行責任ではなく不法行為責任しか追及できません(最判平23.4.22)。判例では、契約締結の際に信義則上の情報提供義務を怠った場合には不法行為責任となり得るとしています。
    契約の一方当事者が,当該契約の締結に先立ち,信義則上の説明義務に違反して,当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には,上記一方当事者は,相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき,不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別,当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはない。
  2. 正しい。利率に関する定めがない場合、その遅延損害金の利率は年3%(法定利率)として計算されます(民法419条1項民法419条2項)。
    利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
    法定利率は、年三パーセントとする。
  3. 正しい。BがCに二重譲渡をし、Cが対抗要件を具備した場合、AB間の売買契約は履行不能とみなされます(最判昭35.4.21)。よって、AはBに対し債務不履行に基づく損害賠償請求を行うことができます(民法415条2項1号)。
    不動産の二重売買の場合において、売主の一方の買主に対する債務は、特段の事情のないかぎり、他の買主に対する所有権移転登記が完了した時に履行不能になるものと解すべきである。
    前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
    一 債務の履行が不能であるとき。
  4. [誤り]。金銭債務の不履行は、不可抗力をもって抗弁とすることはできません。よって、BはAに対して、返済を行うはずであった時点からの遅延損害金を支払う義務があります(民法419条3項)。
    第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。
したがって誤っている記述は[4]です。