その他の契約(全17問中16問目)

No.16

Aが、A所有の不動産の売買をBに対して委任する場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、A及びBは宅地建物取引業者ではないものとする。
平成14年試験 問10
  1. 不動産のような高価な財産の売買を委任する場合には、AはBに対して委任状を交付しないと、委任契約は成立しない。
  2. Bは、委任契約をする際、有償の合意をしない限り、報酬の請求をすることができないが、委任事務のために使った費用とその利息は、Aに請求することができる。
  3. Bが当該物件の価格の調査など善良なる管理者の注意義務を怠ったため、不動産売買についてAに損害が生じたとしても、報酬の合意をしていない以上、AはBに対して賠償の請求をすることができない。
  4. 委任はいつでも解除することができるから、有償の合意があり、売買契約成立寸前にAが理由なく解除してBに不利益を与えたときでも、BはAに対して損害賠償を請求することはできない。

正解 2

問題難易度
肢113.4%
肢275.8%
肢35.1%
肢45.7%

解説

  1. 誤り。委任契約は諾成契約であり、お互いの承諾で契約が成立するため、必ずしも委任状等の書面を交付する必要はありません(民法643条)。
    委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
    委任は、当事者の一方が仕事を完成することを相手方に約し、相手方がその仕事の結果に対しその報酬を支払うことを約さなければ、その効力を生じない。R6-2-4
  2. [正しい]。委任契約は原則無償であり、契約で報酬を支払う特約を定めた場合に限り有償となります(民法648条1項)。ただし、この報酬と委任事務の処理に要した費用の請求は別で、受任者は委任者に対して、報酬の特約がなくても委任事務の必要費を費用+利息の償還を請求できます(民法650条1項)。
    よって、受任者Bは有償の合意がなくても、委任事務のために使った費用とその利息を委任者Aに請求することができます。
    受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
    受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
    Aは、B所有の甲不動産の売却について、売買契約が締結されるに至った場合には売買代金の2%の報酬の支払いを受けるとして、Bから買主のあっせんの依頼を受けた。Aがあっせんした買主Cとの間で1,000万円の売買契約が成立したのでAがBに対して報酬として20万円の支払いを求める場合。H23-8-2
  3. 誤り。委任契約の受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負います(善管注意義務、民法644条)。善管注意義務は有償・無償を問わず課されるので、報酬の合意をしていない場合であっても、委任者Aは受任者Bの善管注意義務違反に基づき、損害賠償請求をすることができます。
    受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
  4. 誤り。委任契約はいつでも解除できるのが原則です(民法651条1項)。しかし、相手方に不利益となる時期に解除した場合には、やむを得なかった場合を除きその損害を賠償しなければなりません(民法651条2項)。
    よって、委任者Aが理由なく解除して受任者Bに不利益を与えた場合、BはAに対して損害賠償を請求することができます。
    委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
    前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
    一 相手方に不利な時期に委任を解除したとき。
    二 委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。
    委任によって代理権を授与された者は、報酬を受ける約束をしている場合であっても、いつでも委任契約を解除して代理権を消滅させて、代理人を辞することができる。R4-9-ア
したがって正しい記述は[2]です。