債権総則(全37問中15問目)

No.15

A銀行のBに対する貸付債権1,500万円につき、CがBの委託を受けて全額について連帯保証をし、D及びEは物上保証人として自己の所有する不動産にそれぞれ抵当権を設定していた場合、次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
平成25年試験 問6
  1. CがA銀行に対して債権全額について保証債務を履行した場合、Cは、D及びEの各不動産に対する抵当権を実行して1,500万円を回収することができる。
  2. A銀行がDの不動産の抵当権を実行して債権全額を回収した場合、DはCに対して、1,000万円を限度として求償することができる。
  3. 第三者がDの所有する担保不動産を買い受けた後、CがA銀行に対して債権全額を弁済した場合、Cは代位の付記登記をしなければ、当該第三者に対してA銀行に代位することができない。
  4. Eの担保不動産を買い受けた第三者がA銀行に対して債権全額を弁済した場合、当該第三者は、Cに対して、弁済した額の一部を求償することができる。

正解 4

問題難易度
肢112.3%
肢29.1%
肢319.2%
肢459.4%

解説

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  1. 誤り。債務者に代わり債務の全部を弁済した者は、債権者に代位して、債権者が有していた一切の権利を行使することができます(民法501条1項)。ただし、保証人・物上保証人との間においては、人数に応じて分割し、その範囲で債権者に代位します(民法501条3項4号)。
    Cの負担部分は「1,500万円÷3人=500万円」ですから、Cは、D・Eに対して「1,500万円-500万円=1,000万円」の範囲内でのみ代位することができます。よって、CがD及びEの抵当権を実行しても、D及びEから1,500万円を回収することはできません。
    前二条の規定により債権者に代位した者は、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。
    保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
  2. 誤り。物上保証人Dは弁済に正当な利益を有し、Bのために債務を消滅させたので肢1と同じくDはAに代位します。保証人・物上保証人との間においては、その人数に応じて分割し、その範囲で債権者に代位するので、DはCに対して「1,500万円÷3人=500万円」の範囲でしか代位することができません。
  3. 誤り。民法改正により、代位の付記登記がなくても第三取得者に対して債権者に代位できることとなりました(旧民法501条1号の削除)。元々このケースでは、先に第三取得者が取得をし、その後に保証人が弁済しているので、代位の付記登記がなくても代位することができたので正誤はそのままです。
  4. [正しい]。物上保証人から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、物上保証人とみなされます(民法501条3項5号)。
    物上保証人が債権全額を弁済した場合は、肢1と同様に保証人・物上保証人との間で人数に応じて分割し、その範囲で債権者に代位します。よって、当該第三者はCに対して、弁済した額の一部を求償することができます(民法501条3項4号)。
    第三取得者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、第三取得者とみなして第一号及び第二号の規定を適用し、物上保証人から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、物上保証人とみなして第一号、第三号及び前号の規定を適用する。
    Dが、Aに対して債権全額につき保証債務を履行した場合、Cの物上保証の担保物件の価額相当額につきCに対する求償権を取得する。H18-7-4
したがって正しい記述は[4]です。