担保物権(全31問中1問目)

No.1

Aの所有する甲土地にBを地上権者とする地上権(以下この問において「本件地上権」という。)が設定され、その旨の登記がされた後に、甲土地にCを抵当権者とする抵当権が設定され、その旨の登記がされた場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。
  1. BがAとの売買契約に基づき、甲土地の所有権を取得したときは、本件地上権は消滅する。
  2. Aが死亡してBがAを単独相続し、甲土地の所有権を取得したときは、本件地上権は消滅する。
  3. BがAとの代物弁済契約に基づき、甲土地の所有権を取得したときは、本件地上権は消滅する。
  4. BがAとの贈与契約に基づき、甲土地の所有権を取得したときは、本件地上権は消滅する。
令和6年試験 問6
  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. なし

正解 4

問題難易度
肢112.0%
肢215.9%
肢322.2%
肢449.9%

解説

同一の物に関する2つの権利が同一人に帰属した場合、一方の権利が消滅することがあります。これを「混同(こんどう)」といいます。民法では次の2つのときに物権の混同が発生すると定めています(民法179条)。
民法179条
同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
2 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
3 前二項の規定は、占有権については、適用しない。
  1. 所有権とその他の物権が同一人に帰属した場合、その他の物権は消滅する
  2. 所有権以外の物権とその物権を目的とする他の権利が同一人に帰属した場合、その他の権利が消滅する
❶の例としては、地上権者が底地を取得した場合(地上権が消滅)や抵当権者が抵当不動産を取得した場合(抵当権が消滅)があり、❷の例としては、地上権者が地上権を目的とする抵当権を取得した場合(抵当権が消滅)や地上権者が地上権の賃借人から賃借権を取得した場合(賃借権が消滅)などが挙げられます。

ただし、その物やその他の物権が第三者の権利の目的となっている場合には混同は生じません。なお、占有権は混同の対象となりません。

本問のア~エはいずれも地上権者が底地を取得して、地上権者=所有者となるケースです。しかし、甲土地にはCの抵当権が設定されているため、混同の例外となりBの地上権は消滅しません。もし地上権が消滅した場合、Cの抵当権の行使によりBはその土地を使用できなくなってしまうので、地上権を残すことには意味があります。

したがって正しいものは「なし」です。