賃貸借契約(全20問中2問目)

No.2

Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
令和4年試験 問6
  1. Aは、甲土地をBに引き渡す前であれば、①では口頭での契約の場合に限り自由に解除できるのに対し、②では書面で契約を締結している場合も自由に解除できる。
  2. Bは、①ではAの承諾がなければ甲土地を適法に転貸することはできないが、②ではAの承諾がなくても甲土地を適法に転貸することができる。
  3. Bは、①では期間内に解約する権利を留保しているときには期間内に解約の申入れをし解約することができ、②では期間内に解除する権利を留保していなくてもいつでも解除することができる。
  4. 甲土地について契約の本旨に反するBの使用によって生じた損害がある場合に、Aが損害賠償を請求するときは、①では甲土地の返還を受けた時から5年以内に請求しなければならないのに対し、②では甲土地の返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。

正解 3

問題難易度
肢18.9%
肢214.4%
肢365.0%
肢411.7%

解説

  1. 誤り。①賃貸借契約の場合、契約方法や引渡しがあったかどうかにかかわらず、契約の解除を申し入れることはできません。口頭契約であっても解除できないので誤りです。
    ②使用貸借の場合、書面によらない契約であり、借主に目的物を引渡す前であれば、貸主は契約の解除を申し出ることができます。同じく無償の契約である贈与の「書面によらない贈与で履行前のものは撤回できる」と合わせて覚えておくといいでしょう。書面で契約しているときは解除できないので誤りです(民法593条の2)。
    貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。
  2. 誤り。①賃貸借契約の場合、貸主の承諾を得ることで、賃借権の譲渡や転貸をすることができます(民法612条1項)。
    賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
    ②使用貸借の場合も同じで、貸主の承諾を得ることで、第三者に借用物の使用収益をさせることができます(民法594条2項)。承諾がなければ転貸はできないので誤りです。
    借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
    ①ではBはAの承諾を得ずにCに甲建物を賃貸することができ、②ではBはAの承諾を得なければ甲建物をCに転貸することはできない。R3⑫-9-2
    甲地上のA所有の建物が登記されている場合には、AがCと当該建物を譲渡する旨の合意をすれば、Bの承諾の有無にかかわらず、CはBに対して甲地の借地権を主張できる。H17-13-1
    AB間の借地契約が専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を20年とする借地契約である場合には、AはBの承諾の有無にかかわらず、借地権をCに対して譲渡することができ、CはBに対して甲地の借地権を主張できる。H17-13-4
    Bが、乙建物をEに譲渡しようとする場合において、Eが甲地の賃借権を取得してもAに不利となるおそれがないにもかかわらず、Aがその賃借権の譲渡を承諾しないときは、Bは、裁判所にAの承諾に代わる許可をするよう申し立てることができる。H15-13-3
  3. [正しい]。①期間の定めのある賃貸借契約の場合、貸主・借主のどちらも中途解約できる特約(解約権留保特約)があるときに限り、期間内に解約を申し入れることができます(民法618条)。
    当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
    ②使用貸借契約の場合、借主はいつでも契約の解除を申し出ることができます。一方、貸主側からの解約は、期間と目的の定めがないときにはいつでもできますが、本問のように期間又は目的の定めがあるときは、原則として中途解約はすることはできません(民法598条3項)。
    借主は、いつでも契約の解除をすることができる。
    賃貸人も賃借人も契約期間中の中途解約をすることができない旨の規定は、定期借家契約では有効であるが、普通借家契約では無効である。H27-12-4
    賃貸借の期間を定めた場合であって当事者が期間内に解約する権利を留保していないとき、ケース①では賃借人側は期間内であっても1年前に予告することによって中途解約することができるのに対し、ケース②では賃貸人も賃借人もいつでも一方的に中途解約することができる。H26-11-4
    本件普通建物賃貸借契約では、中途解約できる旨の留保がなければ賃借人は2年間は当該建物を借りる義務があるのに対し、本件定期建物賃貸借契約では、一定の要件を満たすのであれば、中途解約できる旨の留保がなくても賃借人は期間の途中で解約を申し入れることができる。H24-12-4
    契約期間を定めた場合、賃借人は、動産の賃貸借契約である場合は期間内に解約を行う権利を留保することができるが、建物の賃貸借契約である場合は当該権利を留保することはできない。H17-15-4
  4. 誤り。①賃貸借契約の場合、契約の本旨に反する使用収益によって生じた損害がある場合、目的物の返還を受けた時から1年以内に請求しなければなりません(民法622条が準用する民法600条)。5年と説明しているので誤りです。
    ②使用貸借の場合も同じで、契約の本旨に反する使用収益によって生じた損害がある場合、目的物の返還を受けた時から1年以内に請求しなければなりません(民法600条1項)。
    契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
したがって正しい記述は[3]です。