賃貸借契約(全20問中1問目)

No.1

Aを貸主、Bを借主として甲建物の賃貸借契約が令和6年7月1日に締結された場合の甲建物の修繕に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
令和5年試験 問9
  1. 甲建物の修繕が必要であることを、Aが知ったにもかかわらず、Aが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。
  2. 甲建物の修繕が必要である場合において、BがAに修繕が必要である旨を通知したにもかかわらず、Aが必要な修繕を直ちにしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。
  3. Bの責めに帰すべき事由によって甲建物の修繕が必要となった場合は、Aは甲建物を修繕する義務を負わない。
  4. 甲建物の修繕が必要である場合において、急迫の事情があるときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。

正解 2

問題難易度
肢111.4%
肢246.0%
肢337.3%
肢45.3%

解説

賃貸借契約において、賃貸物を修繕する義務は「貸主」にあります。借主が無断で賃貸物に変更を加えると、貸主の所有権の侵害や賃貸借契約上の用法違反となり得るため、原則として借主は修繕ができないのですが、次の3つのケースでは借主による修繕をすることができます(民法607条の2)。
  1. 修繕が必要なことを借主が貸主に通知してから、相当な期間内に修繕しないとき
  2. 修繕が必要なことを貸主が知ってから、相当な期間内に修繕しないとき
  3. 急迫な事情があるとき
  1. 正しい。修繕が必要であることを貸主が知ったにもかかわらず、相当な期間内に修繕をしないときは、借主は自ら修繕をすることができます(民法607条の2第1号)。なお、修繕費は必要費として貸主に請求することができます。
    賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
    一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
    甲建物の修繕が必要である場合において、BがAに修繕が必要である旨を通知したにもかかわらず、Aが必要な修繕を直ちにしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。R5-9-2
    甲建物の修繕が必要である場合において、急迫の事情があるときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。R5-9-4
    当該建物の修繕が必要である場合において、BがAに修繕が必要である旨を通知したにもかかわらずAが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは自ら修繕をすることができる。R2⑫-12-1
  2. [誤り]。「直ちに」ではありません。借主による修繕が認められているのは、修繕が必要なことを貸主に通知したにもかかわらず、相当な期間内に修繕が行われなかった場合です(民法607条の2第1号)。
    賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
    一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
    甲建物の修繕が必要であることを、Aが知ったにもかかわらず、Aが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。R5-9-1
    甲建物の修繕が必要である場合において、急迫の事情があるときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。R5-9-4
    当該建物の修繕が必要である場合において、BがAに修繕が必要である旨を通知したにもかかわらずAが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは自ら修繕をすることができる。R2⑫-12-1
  3. 正しい。貸主には賃貸物の使用収益のために必要な修繕をする義務がありますが、借主の責めに帰すべき事由によって必要になった修繕については、修繕義務の対象外です(民法606条1項)。借主のミスで壊れたものまで、貸主の負担で直す必要はないということです。したがって、借主に帰責事由のある修繕について、貸主は修繕する義務を負いません。
    賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
    ①でも②でも、特約がなくても、BはAに対して、甲土地の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。R4-8-1
    建物の賃貸人が必要な修繕義務を履行しない場合、賃借人は目的物の使用収益に関係なく賃料全額の支払を拒絶することができる。H25-8-3
    賃貸人と賃借人との間で別段の合意をしない限り、動産の賃貸借契約の賃貸人は、賃貸物の使用収益に必要な修繕を行う義務を負うが、建物の賃貸借契約の賃貸人は、そのような修繕を行う義務を負わない。H17-15-2
  4. 正しい。賃借物の修繕が必要な場合において、急迫の事情がある場合には、借主は自ら必要な修繕をすることができます(民法607条の2第2号)。急迫な事情の例としては、水漏れが発生していて放置することにより被害が拡大してしまう場合などが挙げられます。
    賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。

    二 急迫の事情があるとき。
    甲建物の修繕が必要であることを、Aが知ったにもかかわらず、Aが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。R5-9-1
    甲建物の修繕が必要である場合において、BがAに修繕が必要である旨を通知したにもかかわらず、Aが必要な修繕を直ちにしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。R5-9-2
    当該建物の修繕が必要である場合において、BがAに修繕が必要である旨を通知したにもかかわらずAが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは自ら修繕をすることができる。R2⑫-12-1
したがって誤っている記述は[2]です。