売買契約(全29問中2問目)

No.2

不在者Aが、家庭裁判所から失踪宣告を受けた。Aを単独相続したBは相続財産である甲土地をCに売却(以下この問において「本件売買契約」という。)して登記も移転したが、その後、生存していたAの請求によって当該失踪宣告が取り消された。本件売買契約当時に、Aの生存について、(ア)Bが善意でCが善意、(イ)Bが悪意でCが善意、(ウ)Bが善意でCが悪意、(エ)Bが悪意でCが悪意、の4つの場合があり得るが、これらのうち、民法の規定及び判例によれば、Cが本件売買契約に基づき取得した甲土地の所有権をAに対抗できる場合を全て掲げたものとして正しいものはどれか。
令和4年試験 問7
  1. (ア)、(イ)、(ウ)
  2. (ア)、(イ)
  3. (ア)、(ウ)
  4. (ア)

正解 4

問題難易度
肢114.0%
肢238.0%
肢39.7%
肢438.3%

解説

失踪宣告は、不在者の生死が7年間明らかでないときに、家庭裁判所によって行われるものです。失踪宣告を受けた者は、死亡した者として扱われます。

本問のように失踪宣告を受けた者が生存していた場合、本人や利害関係者から請求があると失踪宣告が取り消され、相続など失踪宣告で生じた法律効果はなかったことになります。ただし、失踪宣告の取消しの効果は、失踪宣告から取消しまでの間に「善意」でした行為に対しては及びません。
民法32条1項
失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
この「善意」という要件がどこまで求められるかというのが本問の論点ですが、判例では、契約当時に相続人と第三者の双方が善意であることが必要であるとしています。
大判昭13.2.7
民法32条1項後段の善意とは、その行為が契約であれば、契約の当時、取引当事者の双方が善意であることを要する
よって、(ア)のBが善意でCが善意の場合のみ、甲土地の売買契約の効力がそのまま残ることになります。したがって[4]が正解です。