債権総則(全35問中34問目)

No.34

Aが、Bに対して有する金銭債権をCに譲渡した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
平成12年試験 問6
  1. 譲渡通知は、AがBに対してしなければならないが、CがAの代理人としてBに対して通知しても差し支えない。
  2. Bが譲渡を承諾する相手方は、A又はCのいずれでも差し支えない。
  3. Aが、CとDとに二重譲渡し、それぞれについて譲渡通知をした場合で、Cに係る通知の確定日付はDに係るものより早いが、Bに対しては、Dに係る通知がCに係る通知より先に到達したとき、Dへの債権譲渡が優先する。
  4. Bが、既にAに弁済していたのに、AのCに対する譲渡を異議を留めないで承諾した場合、Bは、弁済したことをCにもAにも主張することができない。

正解 4

問題難易度
肢115.3%
肢210.5%
肢318.2%
肢456.0%

解説

  1. 正しい。債権の譲渡通知は、譲渡人から債務者に対して行わなければなりません(民法467条1項)。これは譲受人が真に債権を譲り受けたのかどうかが債務者にはわからないためです。よって、Cが譲受人の立場で債務者Bにした通知は有効なものとはなりません(大判昭5.10.10)。
    しかし判例では、譲渡人が譲受人に代理権を付与し、代理権をもつ譲受人が債務者にした通知であれば有効であるとしています(大判昭12.11.9)。したがって、Cが代理人の立場でBに対して通知をしても差し支えません。
    債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない
    指名債権の譲受人が,譲渡人に代位して確定日付証書により通知しても、債務者に対して債権譲受けを主張することができない。
    AがBに債権譲渡の通知を発送し、その通知がBに到達していなかった場合には、Bが承諾をしても、BはCに対して当該債権に係る債務の弁済を拒否することができる。H28-5-2
    Bが債権譲渡を承諾しない場合、CがBに対して債権譲渡を通知するだけでは、CはBに対して自分が債権者であることを主張することができない。H15-8-2
  2. 正しい。債権譲渡につき債務者が行う承諾は、債権譲渡の対抗要件となっていますが、この承諾は譲渡人と譲受人どちらに対して行っても良いとされています(大判大6.10.2)。債務者が債権譲渡を認識している以上、どちらに承諾を行っても不都合はないためです。
    指名債権の譲渡を第三者に対抗するための債務者の承認は、債権の譲渡人または譲受人のいずれに対するものであってもよい。
  3. 正しい。債権が二重に譲渡された場合、一方の譲受人が他方に対抗するには確定日付のある証書による通知が必要となります。この通知が両者に対して行われた場合、両者の優劣は確定日付の先後ではなく到達日時の先後によって決まります(最判昭49.3.7)。本肢では、先に債務者Bに届いたのはDに係る通知なので、Dへの債権譲渡が優先されます。
    指名債権が二重に譲渡された場合、譲受人相互の問の優劣は、確定日付ある通知が債務者に到達した日時又は確定日付ある債務者の承諾の日時の先後によつて決すべきである。
    Aが貸付金債権をEに対しても譲渡し、Cへは令和6年10月10日付、Eへは同月9日付のそれぞれ確定日付のある証書によってBに通知した場合で、いずれの通知もBによる弁済前に到達したとき、Bへの通知の到達の先後にかかわらず、EがCに優先して権利を行使することができる。H15-8-4
  4. [誤り]。異議を留めない承諾とは、譲渡人に対して相殺や弁済等の対抗できる事由があった場合でも債権譲渡に際してそのことを主張せず、(全部の)債権譲渡を承諾することです。民法改正前は異議を留めない承諾をした場合、それ以前に譲渡人に対抗できる事由があっても、それを譲受人に対抗できないとされていましたが、民法改正後は異議を留めない承諾の有無にかかわらず、債権譲渡の対抗要件具備時(本問で言えばBの承諾)までに生じた事由によって譲受人に対抗できるようになりました(民法468条1項)。
    よって、異議を留めないで承諾した場合でも、債務者Bはそれ以前に譲渡人Aに対して行った弁済を譲受人Cに主張することができます。
    債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
    Aに対し弁済期が到来した貸金債権を有していたBは、Aから債権譲渡の通知を受けるまでに承諾をせず、相殺の意思表示もしていなかった。その後、Bは、Cから支払請求を受けた際に、Aに対する貸金債権との相殺の意思表示をしたとしても、Cに対抗することはできない。H28-5-4
    BがAに対して期限が到来した1,000万円の貸金債権を有していても、AがBに対して確定日付のある譲渡通知をした場合には、BはCに譲渡された代金債権の請求に対して貸金債権による相殺を主張することができない。H23-5-3
    AがBに対する賃料債権をFに適法に譲渡し、その旨をBに通知したときは、通知時点以前にBがAに対する債権を有しており相殺適状になっていたとしても、Bは、通知後はその債権と譲渡にかかる賃料債務を相殺することはできない。H23-6-4
したがって誤っている記述は[4]です。