担保物権(全30問中9問目)

No.9

債務者Aが所有する甲土地には、債権者Bが一番抵当権(債権額2,000万円)、債権者Cが二番抵当権(債権額2,400万円)、債権者Dが三番抵当権(債権額4,000万円)をそれぞれ有しており、Aにはその他に担保権を有しない債権者E(債権額2,000万円)がいる。甲土地の競売に基づく売却代金5,400万円を配当する場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
平成27年試験 問7
  1. BがEの利益のため、抵当権を譲渡した場合、Bの受ける配当は0円である。
  2. BがDの利益のため、抵当権の順位を譲渡した場合、Bの受ける配当は800万円である。
  3. BがEの利益のため、抵当権を放棄した場合、Bの受ける配当は1,000万円である。
  4. BがDの利益のため、抵当権の順位を放棄した場合、Bの受ける配当は1,000万円である。

正解 2

問題難易度
肢110.8%
肢259.0%
肢318.6%
肢411.6%

解説

抵当権の譲渡、抵当権の放棄の違いを整理しておきます。どちらも二者間でのみ調整が行われ、その他の債権者には影響がないことがポイントです。
譲渡
譲渡した人と譲渡の相手が受ける配当の合計から、譲渡の相手が優先して配当を受け、残りを譲渡した人が受け取る
放棄
譲渡した人と譲渡の相手が受ける配当の合計を、両者の債権額で按分して配当を受け取る ⇒ シェアするイメージ
なお、抵当権の【放棄】と、抵当権の【順位放棄】の違いは、放棄の相手方が抵当権者であるか一般債権者であるかの違いにすぎません。放棄の相手方が一般債権者であるときは放棄、相手方が抵当権者であるときは順位放棄となります。譲渡も同じです。

抵当権者は、一般の債権者よりも優先して弁済を受けることができます。また、抵当権者の中では順位が上のほうが優先して弁済を受けられます。したがって、本問のケースでは、譲渡も放棄もなければ原則として以下のように配当されます。
  • B … 2,000万円
  • C … 2,400万円
  • D … 1,000万円
  • E … 0円
  1. 正しい。BからEに抵当権が譲渡された場合、B・Eの配当の合計「2,000万円+0円=2,000万円」の中から、Eが優先して配当を受けることになります。Eの債権額は2,000万円ですから、Eの配当額は2,000万円、残り額がゼロなのでBの配当額は0円となります。
    • B … 0
    • C … 2,400万円
    • D … 1,000万円
    • E … 2,000万円
  2. [誤り]。BからDに抵当権の順位が譲渡された場合、B・Dの配当の合計「2,000万円+1,000万円=3,000万円」の中から、Dが優先して配当を受けることになります。Dの債権額は4,000万円ですから、Dの配当額は3,000万円、残り額がゼロなのでBの配当額は0円となります。
    • B … 0
    • C … 2,400万円
    • D … 3,000万円
    • E … 0円
  3. 正しい。BからEに抵当権の放棄が行われた場合、B・Eの配当の合計「2,000万円+0円=2,000万円」は、B・Eの債権額の割合に応じて配分されることになります。Bの債権額は2,000万円、Eは2,000万円ですから、B・Eの配当額の合計2,000万円は「B:E=1:1」で配分されることになります。
    • B … 2,000万円×1/2=1,000万円
    • C … 2,400万円
    • D … 1,000万円
    • E … 2,000万円×1/2=1,000万円
  4. 正しい。BからDに抵当権の順位の放棄が行われた場合、B・Dの配当の合計「2,000万円+1,000万円=3,000万円」は、B・Dの債権額の割合に応じて配分されることになります。Bの債権額は2,000万円、Dは4,000万円ですから、B・Dの配当額の合計3,000万円は「B:D=1:2」で配分されることになります。
    • B … 3,000万円×1/3=1,000万円
    • C … 2,400万円
    • D … 3,000万円×2/3=2,000万円
    • E … 0円
したがって誤っている記述は[2]です。