担保物権(全30問中26問目)

No.26

Aは、Bに対する貸付金債権の担保のために、当該貸付金債権額にほぼ見合う評価額を有するB所有の更地である甲土地に抵当権を設定し、その旨の登記をした。その後、Bはこの土地上に乙建物を築造し、自己所有とした。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
平成14年試験 問6
  1. Aは、Bに対し、乙建物の築造行為は、甲土地に対するAの抵当権を侵害する行為であるとして、乙建物の収去を求めることができる。
  2. Bが、甲土地及び乙建物の双方につき、Cのために抵当権を設定して、その旨の登記をした後(甲土地についてはAの後順位)、Aの抵当権が実行されるとき、乙建物のために法定地上権が成立する。
  3. Bが、乙建物築造後、甲土地についてのみ、Dのために抵当権を設定して、その旨の登記をした場合(甲土地についてはAの後順位)、Aの抵当権及び被担保債権が存続している状態で、Dの抵当権が実行されるとき、乙建物のために法定地上権が成立する。
  4. Aは、乙建物に抵当権を設定していなくても、甲土地とともに乙建物を競売することができるが、優先弁済権は甲土地の代金についてのみ行使できる。

正解 4

問題難易度
肢17.4%
肢216.5%
肢313.1%
肢463.0%

解説

  1. 誤り。抵当権は、債権の担保の使用収益を認めつつ、債務が弁済されないときにその担保を競売にかけた金額から優先的に弁済を受けられる権利です(民法369条1項)。土地に抵当権がついていたとしても、土地の利用の使用方法には制約がありません。
    よって、抵当権設定後の土地に建物を築造したとしても、通常に使用収益しただけなのでAの抵当権を侵害する行為にはあたりません。
  2. 誤り。法定地上権は以下の要件をすべて満たしたときに成立します(民法388条)。
    1. 第1順位の抵当権設定当時、土地上に建物があること
    2. 第1順位の抵当権設定当時、土地の所有者と建物の所有者が同一であること
    3. 土地又は建物のどちらか一方に抵当権が設定されていること
    4. 抵当権の実行により、土地の所有者と建物の所有者が別人になったこと
    Aが抵当権を設定したとき、甲土地は更地でしたから法定地上権は成立しません。
    Aが甲土地に抵当権を設定した当時、甲土地上にA所有の建物があり、当該建物をAがCに売却した後、Bの抵当権が実行されてDが甲土地を競落した場合、DはCに対して、甲土地の明渡しを求めることはできない。H28-4-1
    Bの抵当権設定後、Cの抵当権設定前に甲土地上に乙建物が建築され、Cが抵当権を実行した場合には、乙建物について法定地上権が成立する。H18-5-3
  3. 誤り。本肢のように、更地に第1順位(A)の抵当権を設定→建物を築造→土地に第2順位(D)の抵当権を設定となった場合、第2順位の抵当権が実行されても法定地上権は成立しません(最判昭47.11.2)。判例ではこの理由を、土地は第1順位抵当権設定当時の状態において競売されるべきものであるからとしています。
    土地に対する第一順位抵当権の設定当時その地上に建物がなく、第二順位抵当権の設定当時には建物が建築されていた場合に、第二順位抵当権者の申立により土地が競売されたときでも、右建物のため法定地上権が成立するものではない。
  4. [正しい]。抵当権の設定後に建物が築造された場合は、抵当権者は土地とともに建物を競売することができます。このとき、優先弁済権は土地の代金についてのみ行使でき、建物の代金には及びません(民法389条1項)。
    抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。
    本件抵当権設定登記後に、甲土地上に乙建物が築造された場合、Cが本件抵当権の実行として競売を申し立てるときには、甲土地とともに乙建物の競売も申し立てなければならない。R4-4-3
したがって正しい記述は[4]です。