担保物権(全30問中20問目)

No.20

Aは、自己所有の甲不動産につき、B信用金庫に対し、極度額を3,000万円、被担保債権の範囲を「信用金庫取引による債権」とする第1順位の根抵当権を設定し、その旨の登記をした。なお、担保すべき元本の確定期日は定めなかった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
平成19年試験 問8
  1. 元本の確定前に、被担保債権の範囲を変更するには、後順位の抵当権者がいる場合は、その者の承諾を得なければならない。
  2. 元本の確定前に、B信用金庫から、被担保債権の範囲に属する個別債権の譲渡を受けた者は、確定日付のある証書でAに対し債権譲渡通知を行っておけば、その債権について根抵当権を行使できる。
  3. B信用金庫は、確定した元本が極度額以下であれば、その元本に係る最後の2年分の約定金利については、極度額を超えても、根抵当権を行使できる。
  4. Aが友人CのためにB信用金庫との間で保証契約を締結し保証債務を負担した場合、B信用金庫のAに対するこの保証債権は、「信用金庫取引による債権」に含まれ、この根抵当権で担保される。

正解 4

問題難易度
肢122.8%
肢213.5%
肢313.5%
肢450.2%

解説

  1. 誤り。根抵当権では、元本の確定前であれば、被担保債権の範囲の変更につき後順位抵当権者の承諾は不要です(民法398条の4)。
    元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする。
  2. 誤り。元本確定前の根抵当権には随伴性はありませんので、債権だけが譲受人に移動する形となります。よって、被担保債権の範囲に属する個別債権を取得した場合であっても、債権の譲受人が根抵当権を行使することはできません(民法398条の7第1項)。
    ※随伴性とは、被担保債権の移動に伴って担保権の権利者も移動する性質です。保証契約、抵当権および元本確定の根抵当権には随伴性があります。
    元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする。
    根抵当権の被担保債権に属する個別の債権が、元本の確定前に、根抵当権者から第三者に譲渡された場合、その第三者は、当該根抵当権に基づく優先弁済を主張できない。H12-5-4
  3. 誤り。根抵当権では、極度額の範囲内において約定金利全部についても担保されることとなります。しかし、極度額を超えた部分は担保されません(民法398条の3第1項)。
    根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。
    根抵当権者は、総額が極度額の範囲内であっても、被担保債権の範囲に属する利息の請求権については、その満期となった最後の2年分についてのみ、その根抵当権を行使することができる。H23-4-1
    登記された極度額が1億円の場合、根抵当権者は、元本1億円とそれに対する最後の2年分の利息及び損害金の合計額につき、優先弁済を主張できる。H12-5-3
  4. [正しい]。保証契約は主債務者と保証人の間で締結すると勘違いしがちですが、実際には【債権者と保証人の間】で締結する契約です。つまり、"Aが友人CのためにB信用金庫との間で保証契約を締結"すると、AはB信用金庫に対して保証債務を負うこととなります。本問では「信用金庫取引による債権」を対象として根抵当権が設定されているので、AのB信用金庫に対する保証債務も被担保債権に含まれます(最判平5.1.19)。
    被担保債権の範囲を「信用金庫取引による債権」として設定された根抵当権の被担保債権には、信用金庫の根抵当債務者に対する保証債権も含まれる。
したがって正しい記述は[4]です。