担保物権(全30問中12問目)

No.12

抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
平成25年試験 問5
  1. 債権者が抵当権の実行として担保不動産の競売手続をする場合には、被担保債権の弁済期が到来している必要があるが、対象不動産に関して発生した賃料債権に対して物上代位をしようとする場合には、被担保債権の弁済期が到来している必要はない。
  2. 抵当権の対象不動産が借地上の建物であった場合、特段の事情がない限り、抵当権の効力は当該建物のみならず借地権についても及ぶ。
  3. 対象不動産について第三者が不法に占有している場合、抵当権は、抵当権設定者から抵当権者に対して占有を移転させるものではないので、事情にかかわらず抵当権者が当該占有者に対して妨害排除請求をすることはできない。
  4. 抵当権について登記がされた後は、抵当権の順位を変更することはできない。

正解 2

問題難易度
肢115.0%
肢270.0%
肢38.2%
肢46.8%

解説

  1. 誤り。債務不履行があった場合、抵当権の効力は抵当不動産の賃料に及びます(民法371条)。しかし、弁済期が到来していなければ不履行はないため、賃料に物上代位することはできません。
    抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
    本件抵当権設定登記後にAC間の賃貸借契約が締結され、AのBに対する借入金の返済が債務不履行となった場合、Bは抵当権に基づき、AがCに対して有している賃料債権を差し押さえることができる。R3⑫-10-1
    Aの抵当権設定登記があるB所有の建物の賃料債権について、Aが当該建物に抵当権を実行していても、当該抵当権が消滅するまでは、Aは当該賃料債権に物上代位することができる。H24-7-2
  2. [正しい]。借地上の建物に設定した抵当権の効力は、特段の事情がない限り、建物の従たる権利である当該建物の借地権についても及びます。借地上の建物は、借地権を土地利用の権限としており、借地権がなければ建物が存在できないように、2つは一体として財産的価値を形成しているからです(民法370条最判昭40.5.4)。
    抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでない。
    土地賃借人が該土地上に所有する建物について抵当権を設定した場合には、原則として、右抵当権の効力は当該土地の賃借権に及び、右建物の競落人と賃借人との関係においては、右建物の所有権とともに土地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である。
    借地人が所有するガソリンスタンド用店舗建物に抵当権を設定した場合、当該建物の従物である地下のタンクや洗車機が抵当権設定当時に存在していれば、抵当権の効力はこれらの従物に及ぶ。H19-7-4
  3. 誤り。抵当不動産が第三者に不法占拠され、抵当不動産の売却価額が下落するおそれがあるなど、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられるような状況にあるときは、抵当権者は、当該占有者に対し、抵当権設定者の所有権に代位する形で妨害排除請求をすることができます(最判平11.11.24)。
    第三者が抵当不動産を不法占有することにより、競売手続の進行が害され適正な価額よりも売却価額が下落するおそれがあるなど、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、抵当不動産の所有者に対して有する右状態を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を保全するため、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができる。
    抵当権者は、抵当不動産の所有者に対し当該不動産を適切に維持又は保存することを求める請求権を保全するため、その所有者の妨害排除請求権を代位行使して、当該不動産の不法占有者に対しその不動産を直接自己に明け渡すよう請求できる場合がある。H22-7-4
  4. 誤り。抵当権について登記がされた後であっても、各抵当権者の合意があれば、順位変更の登記をすることにより抵当権の順位を変更することができます(民法374条)。
    抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。
    2 前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。
    AがEから500万円を借り入れ、これを担保するために甲土地にEを抵当権者とする第2順位の抵当権を設定した場合、BとEが抵当権の順位を変更することに合意すれば、Aの同意がなくても、甲土地の抵当権の順位を変更することができる。H28-4-3
    Aが抵当権によって担保されている2,400万円の借入金全額をBに返済しても、第一順位の抵当権を抹消する前であれば、Cの同意の有無にかかわらず、AはBから新たに2,400万円を借り入れて、第一順位の抵当権を設定することができる。H18-5-2
    Bと、甲地に関する第2順位の抵当権者は、合意をして、甲地上の抵当権の順位を変更することができるが、この順位の変更は、その登記をしなければ効力が生じない。H13-7-4
したがって正しい記述は[2]です。