担保物権(全30問中11問目)

No.11

留置権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
平成25年試験 問4
  1. 建物の賃借人が賃貸人の承諾を得て建物に付加した造作の買取請求をした場合、賃借人は、造作買取代金の支払を受けるまで、当該建物を留置することができる。
  2. 不動産が二重に売買され、第2の買主が先に所有権移転登記を備えたため、第1の買主が所有権を取得できなくなった場合、第1の買主は、損害賠償を受けるまで当該不動産を留置することができる。
  3. 建物の賃貸借契約が賃借人の債務不履行により解除された後に、賃借人が建物に関して有益費を支出した場合、賃借人は、有益費の償還を受けるまで当該建物を留置することができる。
  4. 建物の賃借人が建物に関して必要費を支出した場合、賃借人は、建物所有者ではない第三者が所有する敷地を留置することはできない。

正解 4

問題難易度
肢112.2%
肢210.0%
肢316.3%
肢461.5%

解説

  1. 誤り。造作買取請求権は、建物に関して生じたものではなく建物の造作について生じたものです。物と債権の牽連性がないため建物留置は認められません(民法295条1項最判昭29.7.22)。
    他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
    借家法第五条により造作の買収を請求した家屋の賃借人は、その代金の不払を理由として右家屋を留置し、または右代金の提供がないことを理由として同時履行の抗弁により右家屋の明渡を拒むことはできない。
  2. 誤り。第1買主が第2買主に引渡しを拒んだ場合でも、売主の損害賠償を間接的に強制することにはなりません。物と債権の間に牽連性がなので、留置権は認められません(最判昭43.11.21)。
    不動産の二重売買において、第二の買主のため所有権移転登記がされた場合、第一の買主は、第二の買主の右不動産の所有権に基づく明渡請求に対し、売買契約不履行に基づく損害賠償債権をもつて、留置権を主張することは許されない。
  3. 誤り。賃貸借契約が解除された後に何ら権限を持たず不法占拠している者が有益費や必要費を支出したとしても、その費用に基づく留置権は認められません(最判昭41.3.3)。最初から不法で占有していた者と同様の扱いになります。
    建物の売買契約によりその引渡を受けた買主が、右売買契約の合意解除後売主所有の右建物を権原のないことを知りながら不法に占有中、右建物につき必要費、有益費を支出したとしても、買主は、民法第二九五条第二項の類推適用により、当該費用の償還請求権に基づく右建物の留置権を主張できない。
    甲土地全体がEによって不法に占有されている場合、Aは単独でEに対して、Eの不法占有によってA、B及びCに生じた損害全額の賠償を請求できる。H18-4-2
  4. [正しい]。建物の賃借人が建物に関して必要費を支出した場合、賃借人はその弁済を受けるまで建物を留置できます。しかし、建物所有者ではない第三者が所有する敷地を留置することは、物と債権との間に牽連性がないためできません。
したがって正しい記述は[4]です。