所有権・共有・占有権・用益物権(全32問中19問目)

No.19

A、B及びCが、持分を各3分の1とする甲土地を共有している場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
平成19年試験 問4
  1. 共有者の協議に基づかないでAから甲土地の占有使用を承認されたDは、Aの持分に基づくものと認められる限度で甲土地を占有使用することができる。
  2. A、B及びCが甲土地について、Eと賃貸借契約を締結している場合、AとBが合意すれば、Cの合意はなくとも、賃貸借契約を解除することができる。
  3. A、B及びCは、5年を超えない期間内は甲土地を分割しない旨の契約を締結することができる。
  4. Aがその持分を放棄した場合には、その持分は所有者のない不動産として、国庫に帰属する。

正解 4

問題難易度
肢13.4%
肢212.7%
肢34.4%
肢479.5%

解説

  1. 正しい。共有者は、共有物の全部を持分に応じて使用することができます(民法249条1項)。よって、本肢のように当該共有者の持分に基づくものと認められる限度でDのような第三者に甲土地を占有使用させることもできます(最判昭63.5.20)。
    各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
    共有者の一部の者から共有物を占有使用することを承認された第三者に対して、その余の共有者は、当然には、共有物の明渡しを請求することができない。
    共同相続に基づく共有物の持分価格が過半数を超える相続人は、協議なくして単独で共有物を占有する他の相続人に対して、当然にその共有物の明渡しを請求することができる。H30-10-4
    他の共有者との協議に基づかないで、自己の持分に基づいて1人で現に共有物全部を占有する共有者に対し、他の共有者は単独で自己に対する共有物の明渡しを請求することができる。H23-3-4
    Bが、その持分に基づいて単独でこの建物全部を使用している場合は、A・Cは、Bに対して、理由を明らかにすることなく当然に、その明渡しを求めることができる。H13-1-2
  2. 正しい。共有物の賃貸借契約を解除する行為は「管理行為」に該当します。管理行為を行う場合は、共有者の持分価格の過半数により決することとなります(民法252条)。
    AとBの持分を合わせると全体の3分の2となるため、Cの合意がなくてもEとの賃貸借契約を解除できます。
    共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
    甲土地全体がDによって不法に占有されている場合、Aは単独でDに対して、甲土地の明渡しを請求できる。H18-4-1
  3. 正しい。共有者は、5年以内で共有物を分割しない期間を定める契約を締結することができます(民法256条1項)。
    各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
    各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができるが、5年を超えない期間内であれば、分割をしない旨の契約をすることができる。H23-3-1
    各共有者は何時でも共有物の分割を請求できるのが原則であるが、5年を超えない期間内であれば分割をしない旨の契約をすることができる。H15-4-4
  4. [誤り]。他の共有者がいる場合、放棄した持分は他の共有者に帰属することとなります(民法255条)。国庫に帰属ではありません。
    共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
    共有者の一人が死亡して相続人がないときは、その持分は国庫に帰属する。R2⑫-10-4
    Aが死亡し、相続人の不存在が確定した場合、Aの持分は、民法第958条の3の特別縁故者に対する財産分与の対象となるが、当該財産分与がなされない場合はB及びCに帰属する。H18-4-4
    Aが、その共有持分を放棄した場合、この建物は、BとCの共有となり、共有持分は各2分の1となる。H15-4-3
したがって誤っている記述は[4]です。