代理(全18問中3問目)

No.3

次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び判例並びに下記判決文によれば、誤っているものはどれか。
(判決文)
本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではないと解するのが相当である。けだし、無権代理人がした行為は、本人がその追認をしなければ本人に対してその効力を生ぜず(民法113条1項)、本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定し、追認拒絶の後は本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができず、右追認拒絶の後に無権代理人が本人を相続したとしても、右追認拒絶の効果に何ら影響を及ぼすものではないからである。
令和元年試験 問5
  1. 本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合、その後は本人であっても無権代理行為を追認して有効な行為とすることはできない。
  2. 本人が追認拒絶をした後に無権代理人が本人を相続した場合と、本人が追認拒絶をする前に無権代理人が本人を相続した場合とで、法律効果は同じである。
  3. 無権代理行為の追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
  4. 本人が無権代理人を相続した場合、当該無権代理行為は、その相続により当然には有効とならない。

正解 2

問題難易度
肢15.1%
肢271.3%
肢311.7%
肢411.9%

解説

  1. 正しい。本問の判決文には、「本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができず」とあります。よって、本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合、その後は本人であっても、無権代理行為を追認して有効な行為とすることはできません。
  2. [誤り]。本人が追認拒絶をした時点で本人に効力が及ばないことが確定するので、その後に無権代理人が本人を相続しても、その無権代理行為は有効とはなりません。一方、本人が追認拒絶をする前に無権代理人が本人を相続した場合、無権代理人が追認拒絶をすることは信義則上許されず、当然に有効となります(最判昭40.6.18)。
    無権代理人が本人を相続し、本人と代理人との資格が同一人に帰するにいたつた場合には、本人がみずから法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたものと解するのが相当である。
    無権代理人が本人に無断で本人の不動産を売却した後に、単独で本人を相続した場合、本人が自ら当該不動産を売却したのと同様な法律上の効果が生じる。H30-10-1
    Aの死亡により、BがAの唯一の相続人として相続した場合、Bは、Aの追認拒絶権を相続するので、自らの無権代理行為の追認を拒絶することができる。H24-4-2
    Aが無権代理人であってDとの間で売買契約を締結した後に、Bの死亡によりAが単独でBを相続した場合、Dは甲土地の所有権を当然に取得する。H20-3-3
  3. 正しい。無権代理行為の追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずることとなります。なお、この場合でも第三者の権利を害することはできません(民法116条)。
    追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
    Bが、Aから代理権を授与されていないA所有の乙土地の売却につき、Aの代理人としてFと売買契約を締結した場合、AがFに対して追認の意思表示をすれば、Bの代理行為は追認の時からAに対して効力を生ずる。R2⑫-2-4
    代理権を有しない者がした契約を本人が追認する場合、その契約の効力は、別段の意思表示がない限り、追認をした時から将来に向かって生ずる。H26-2-ア
    Bの無権代理行為をAが追認した場合には、AC間の売買契約は有効となる。H24-4-1
  4. 正しい。本人が無権代理人を相続した場合、被相続人が行った無権代理行為は、その相続により当然には有効とはなりません(最判昭37.4.20)。無権代理行為は被相続人により行われたものであり、それを相続人が追認しなくても信義則に反するものではないからです。
    本人が無権代理人の家督を相続した場合、被相続人の無権代理行為は、右相続により当然には有効となるものではない。
    Bの死亡により、AがBの唯一の相続人として相続した場合、AがBの無権代理行為の追認を拒絶しても信義則には反せず、AC間の売買契約が当然に有効になるわけではない。H24-4-3
    Aが無権代理人であってEとの間で売買契約を締結した後に、Aの死亡によりBが単独でAを相続した場合、Eは甲土地の所有権を当然に取得する。H20-3-4
    Aが無権代理人であって、Aの死亡によりBが単独でAを相続した場合には、Bは追認を拒絶できるが、CがAの無権代理につき善意無過失であれば、CはBに対して損害賠償を請求することができる。H16-2-4
したがって誤っている記述は[2]です。
参考URL: 最判平10.7.17
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52792