代理(全18問中2問目)

No.2

AがBに対して、A所有の甲土地を売却する代理権を令和6年7月1日に授与した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
令和2年12月試験 問2
  1. Bが自己又は第三者の利益を図る目的で、Aの代理人として甲土地をDに売却した場合、Dがその目的を知り、又は知ることができたときは、Bの代理行為は無権代理とみなされる。
  2. BがCの代理人も引き受け、AC双方の代理人として甲土地に係るAC間の売買契約を締結した場合、Aに損害が発生しなければ、Bの代理行為は無権代理とはみなされない。
  3. AがBに授与した代理権が消滅した後、BがAの代理人と称して、甲土地をEに売却した場合、AがEに対して甲土地を引き渡す責任を負うことはない。
  4. Bが、Aから代理権を授与されていないA所有の乙土地の売却につき、Aの代理人としてFと売買契約を締結した場合、AがFに対して追認の意思表示をすれば、Bの代理行為は追認の時からAに対して効力を生ずる。

正解 1

問題難易度
肢152.1%
肢27.6%
肢321.4%
肢418.9%

解説

  1. [正しい]。代理人が、自己または第三者の利益を図る目的でした代理行為は、相手方がその目的を知り、または知ることができたときは、無権代理行為とみなされます(民法107条)。よって、Bの代理行為は無権代理となります。
    なお、相手方が悪意であるときに限定されているのは、善意の相手方と代理権を濫用するような人を代理人にした(落ち度のある)本人の比較では、取引の安全性の観点から相手方を保護する必要が勝りますが、悪意の相手方との比較では本人の保護が勝るという兼ね合いからです。
    代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
    AがBの代理人として第三者の便益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合、相手方Cがその目的を知っていたとしても、AC間の法律行為の効果はBに帰属する。R3⑫-5-1
    Bが売買代金を着服する意図で本件契約を締結し、Cが本件契約の締結時点でこのことを知っていた場合であっても、本件契約の効果はAに帰属する。H30-2-1
  2. 誤り。同一の法律行為について双方の代理人としてした行為は、双方代理に当たり、無権代理人がした行為であるとみなされます。損害の有無を問いません(民法108条1項)。
    同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
    BがCの代理人にもなって本件契約を成立させた場合、Aの許諾の有無にかかわらず、本件契約は無効となる。H30-2-3
    不動産の売買契約に関して、同一人物が売主及び買主の双方の代理人となった場合であっても、売主及び買主の双方があらかじめ承諾をしているときには、当該売買契約の効果は両当事者に有効に帰属する。H24-2-3
    Bは、Aに損失が発生しないのであれば、Aの意向にかかわらず、買主Fの代理人にもなって、売買契約を締結することができる。H21-2-4
    Aが甲土地の売却を代理する権限をBから書面で与えられている場合、AがCの代理人となってBC間の売買契約を締結したときは、Cは甲土地の所有権を当然に取得する。H20-3-2
    Bは、Aの同意がなければ、この土地の買主になることができない。H12-1-3
  3. 誤り。代理権を有していた人(元代理人)が、代理権消滅後にその代理権の対象行為を第三者との間でした場合、第三者が代理行為の消滅につき善意無過失であるときは、その代理効果は本人に帰属します(民法112条1項)。よって、Eが善意無過失のときには、AはEに甲土地を引き渡す責任を負うことがあります。
    他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
    BがAに与えた代理権が消滅した後にAが行った代理権の範囲内の行為について、相手方Cが過失によって代理権消滅の事実を知らなかった場合でも、Bはその責任を負わなければならない。R3⑫-5-4
    Bが従前Cに与えていた代理権が消滅した後であっても、Aが代理権の消滅について善意無過失であれば、当該売買契約によりAは甲地を取得することができる。H17-3-イ
  4. 誤り。追認をすると契約時に遡って効力を生じます(民法116条)。本肢は「追認の時から」としているので誤りです。
    代理人が代理権の範囲外の行為をしたときは、相手方が善意無過失、かつ、その代理人に代理権があると信じる正当な理由がある場合に限り、表見代理が成立し、代理行為の効果が本人に帰属します(民法110条)。また、表見代理が成立しない場合でも、本人は追認により有権代理と同じようにすることができます。つまり、本肢のケースでは表見代理が成立するしないにかかわらず、契約時に遡って効力を生じることになります。
    追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
    前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
    無権代理行為の追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。R1-5-3
    代理権を有しない者がした契約を本人が追認する場合、その契約の効力は、別段の意思表示がない限り、追認をした時から将来に向かって生ずる。H26-2-ア
    Bの無権代理行為をAが追認した場合には、AC間の売買契約は有効となる。H24-4-1
したがって正しい記述は[1]です。