不動産登記法(全26問中19問目)

No.19

不動産の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、誤っているものはどれか。
平成19年試験 問16
  1. 表題部所有者であるAから土地を買い受けたBは、Aと共同してBを登記名義人とする所有権の保存の登記の申請をすることができる。
  2. 共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記の申請は、当該権利の共有者であるすべての登記名義人が共同してしなければならない。
  3. 権利が法人の解散によって消滅する旨の登記がされている場合において、当該権利がその法人の解散によって消滅したときは、登記権利者は、単独で当該権利に係る権利に関する登記の抹消を申請することができる。
  4. 遺贈(相続人に対する遺贈を除く)を登記原因とする所有権の移転の登記は、遺言執行者が指定されているか否かにかかわらず、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。

正解 1

問題難易度
肢126.7%
肢210.3%
肢319.5%
肢443.5%

解説

  1. [誤り]。表題部しか登記されていない(所有権保存登記のない)不動産を取得した場合、表題部所有者に所有権保存登記をしてもらった後、売主と買主共同で所有権移転登記をするという2段階の登記が必要となります不動産登記法74条1項)。例外として、原始取得者から別の人に譲渡されることを前提とする区分建物については、表題部所有者(デベロッパ等)から購入した買主がそのまま所有権保存登記を申請できることになっています(不動産登記法74条2項)。この2つの違いをしっかりと押さえ分けましょう。
    所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。
    一 表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
    二 所有権を有することが確定判決によって確認された者
    三 収用(土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)その他の法律の規定による収用をいう。第百十八条第一項及び第三項から第五項までにおいて同じ。)によって所有権を取得した者
    区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。
    表題部に所有者として記録されている者の相続人は、所有権の保存の登記を申請することができる。H18-15-3
    所有権の登記がされていない建物について、その所有権が自己にあることを確定判決によって証明できる者は、当該建物の所有権保存の登記を申請することができる。H12-14-1
    土地の登記簿の表題部に被相続人が所有者として記載されている場合において、その相続人が複数あるときは、共同相続人の1人は、自己の持分についてのみ所有権保存の登記を申請することができる。H12-14-2
    土地収用法による収用によって土地の所有権を取得した者は、直接自己名義に当該土地の所有権保存の登記を申請することができる。H12-14-3
  2. 正しい。共有者同士の契約により、5年を超えない期間内で共有物の分割を禁じることが認められています(民法256条)。権利の登記については登記義務者と登記権利者の共同申請が原則ですが、共有物分割禁止の権利の変更は、誰が登記義務者で誰が登記権利者なのか明確でないので、共有者である登記名義人全員の共同申請(合同申請といいます)によってすることになっています(不動産登記法65条)。
    共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記の申請は、当該権利の共有者であるすべての登記名義人が共同してしなければならない。
    共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記の申請は、当該権利の共有者である全ての登記名義人が共同してしなければならない。R5-14-3
    共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記の申請は、当該権利の共有者である全ての登記名義人が共同してしなければならない。H25-14-2
  3. 正しい。権利の登記は、原則として登記権利者と登記義務者が共同で申請しなくてはなりません。しかし、権利が人の死亡または法人の解散によって消滅する旨の登記がされている場合に、当該権利がその法人の解散によって消滅したときは、登記義務者となるべき人が存在しないため、登記権利者は、単独でその権利に関する登記の抹消を申請することができます(不動産登記法69条)。
    権利が人の死亡又は法人の解散によって消滅する旨が登記されている場合において、当該権利がその死亡又は解散によって消滅したときは、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該権利に係る権利に関する登記の抹消を申請することができる。
  4. 正しい。相続を登記原因とする権利の移転登記は、登記義務者となるべき人がいないため、相続人が単独ですることができます。遺贈・死因贈与も相続と同じく、死亡により効力が生じる法律行為ですが、これらの贈与については原則どおり登記権利者(受遺者・受贈者)と登記義務者(共同相続人、遺言執行者が指定されている場合はその者)とによる共同申請となります(不動産登記法60条)。
    ※令和5年4月1日より、登記手続きの簡略化のため、相続人に対する遺贈については相続と同じく単独申請できるように法改正されています(不動産登記法63条3項)。
    権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
    遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。
    権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。H18-15-1
したがって誤っている記述は[1]です。