借地借家法(建物)(全27問中1問目)

No.1

令和6年7月1日に締結された建物の賃貸借契約(定期建物賃貸借契約及び一時使用目的の建物の賃貸借契約を除く。)に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。
令和5年試験 問12
  1. 期間を1年未満とする建物の賃貸借契約は、期間を1年とするものとみなされる。
  2. 当事者間において、一定の期間は建物の賃料を減額しない旨の特約がある場合、現行賃料が不相当になったなどの事情が生じたとしても、この特約は有効である。
  3. 賃借人が建物の引渡しを受けている場合において、当該建物の賃貸人が当該建物を譲渡するに当たり、当該建物の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及び当該建物の譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しない。
  4. 現行賃料が定められた時から一定の期間が経過していなければ、賃料増額請求は、認められない。

正解 3

問題難易度
肢114.3%
肢214.3%
肢358.6%
肢412.8%

解説

  1. 誤り。期間1年とはなりません。普通借家契約において1年未満の存続期間を定めた場合、期間の定めがない建物賃貸借契約とみなされます(借地借家法29条1項)。
    期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
    動産の賃貸借契約は、賃貸人と賃借人が合意して契約期間を6月と定めればそのとおりの効力を有するが、建物の賃貸借契約は、賃貸人と賃借人が合意して契約期間を6月と定めても期間を定めていない契約とみなされる。H17-15-3
  2. 誤り。普通借家契約では、賃料を減額しない旨の特約は無効です。特約がないことと同じになりますから、原則どおり、賃料が近隣の相場と比べて不相当になったときには賃料減額請求をすることができます(借地借家法32条1項)。
    建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
    本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約であって、賃料改定に関する特約がない場合、経済事情の変動により賃料が不相当となったときは、AはBに対し、賃料増額請求をすることができる。R2⑩-12-2
    本件普通建物賃貸借契約でも、本件定期建物賃貸借契約でも、賃料の改定についての特約が定められていない場合であって経済事情の変動により賃料が不相当になったときには、当事者は将来に向かって賃料の増減を請求することができる。H24-12-2
    本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約であって、賃料の改定に関する特約がない場合、契約期間中に賃料が不相当になったと考えたA又はBは、賃料の増減額請求権を行使できる。H22-12-4
    家賃が、近傍同種の建物の家賃に比較して不相当に高額になったときは、契約の条件にかかわらず、Bは、将来に向かって家賃の減額を請求することができる。H13-13-3
    AB間で、3年間は家賃を減額しない旨特に書面で合意した場合、その特約は効力を有しない。H13-13-4
  3. [正しい]。対抗要件を備えている建物賃貸借において、建物の所有者が変わった場合には、新しい所有者に賃貸人の地位が引き継がれるのが原則です(民法605条の2第1項)。しかし、建物の譲渡人と譲受人の間で、①賃貸人たる地位を譲渡人に留保し、かつ、②建物を譲受人から譲渡人に賃貸する合意があった場合には、賃貸人の地位は元の建物所有者に留保されます(民法605条の2第2項)。
    前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
    前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。
    BがAとの間で甲土地の借地契約を締結しており、甲土地購入後に借地権の存続期間が満了した場合であっても、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できない場合がある。H19-13-3
    DがAからこの建物を賃借し、引渡しを受けて適法に占有している場合、Bは、Dに対し、この建物の所有権を対抗でき、賃貸人たる地位を主張できる。H16-3-2
  4. 誤り。現行の賃料が定められた時から一定期間を経過しているかどうかは関係ありません。賃料の増減額を請求するためには、経済事情の変化や近傍同種の建物の借賃に比較して不相当という条件を満たせば足り、この条件を満たせば契約の条件にかかわらず請求することができます(最判平3.11.29)。
    借家法七条一項の規定に基づく賃料増額請求権を行使するには、現行の賃料が定められた時から一定の期間を経過していることを要しない。
したがって正しい記述は[3]です。