家族法(全31問中28問目)

No.28

Aが死亡し、それぞれ3分の1の相続分を持つAの子B、C及びD(他に相続人はいない。)が、全員、単純承認し、これを共同相続した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
平成15年試験 問12
  1. 相続財産である土地につき、遺産分割協議前に、Bが、CとDの同意なくB名義への所有権移転登記をし、これを第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、CとDは、自己の持分を登記なくして、その第三者に対抗できる。
  2. 相続財産である土地につき、B、C及びDが持分各3分の1の共有相続登記をした後、遺産分割協議によりBが単独所有権を取得した場合、その後にCが登記上の持分3分の1を第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、Bは、単独所有権を登記なくして、その第三者に対抗できる。
  3. 相続財産である金銭債権(預貯金債権を除く)は、遺産分割協議が成立するまでは、相続人3人の共有に属し、3人全員の同意がなければ、その債務者に弁済請求できない。
  4. Bが相続開始時に金銭を相続財産として保管している場合、CとDは、遺産分割協議の成立前でも、自己の相続分に相当する金銭を支払うよう請求できる。

正解 1

問題難易度
肢165.3%
肢28.8%
肢315.3%
肢410.6%

解説

  1. [正しい]。共同相続した不動産につき、遺産分割協議成立に共同相続人の1人が勝手に単独で所有権移転登記をし、これを第三者に譲渡した場合、第三者が所有権移転登記を備えても、他の共同相続人は持分の登記がなくても第三者に対抗できます(最判昭38.2.22)。そもそもBは他の共同相続人について無権利であるため、単独の所有権移転登記の一部が無効となるからです。
    甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。
    共同相続財産につき、相続人の一人から相続財産に属する不動産につき所有権の全部の譲渡を受けて移転登記を備えた第三者に対して、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして対抗することができる。R3⑫-6-4
    甲不動産につき兄と弟が各自2分の1の共有持分で共同相続した後に、兄が弟に断ることなく単独で所有権を相続取得した旨の登記をした場合、弟は、その共同相続の登記をしなければ、共同相続後に甲不動産を兄から取得して所有権移転登記を経た第三者に自己の持分権を対抗できない。H19-6-3
  2. 誤り。遺産分割協議成立の相続人は、その取得した権利につき登記をしなければ第三者に対抗できません(最判昭46.1.26)。この場合、対抗関係となるので、Bと第三者で先に登記を備えた方が所有権を主張できます。よって、第三者に対抗するには単独所有権の登記が必要です。
    相続財産中の不動産につき、遺産分割により権利を取得した相続人は、登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、法定相続分をこえる権利の取得を対抗することができない。
  3. 誤り。預貯金債権を除く金銭債権は、相続開始により当然に各相続人に分割されます(最判昭29.4.8)。3人全員の同意は不要で、自分の法定相続分相当額までは債務者に単独で弁済を請求できます。
    ただし、預貯金債権は、共同相続人間の実質的公平を図りやすくする趣旨のため、遺産分割の対象とされており、遺産分割前までは相続人の共有の状態となります(最判平28.12.19)。遺産分割協議が成立してからそれぞれに属することとなります。
    相続人数人ある場合において、相続財産中に金銭の他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解すべきである。
    共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。
  4. 誤り。保管している金銭は債権ではなく動産として扱われるので、相続開始により共同相続人の共有に属します。よって、遺産分割協議の成立前は、自己の相続分に相当する金銭を支払うよう請求することはできません(最判平4.4.10
    相続人は、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできない。
したがって正しい記述は[1]です。