家族法(全31問中16問目)

No.16

遺言及び遺留分に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
平成27年試験 問10
  1. 自筆証書の内容を遺言者が一部削除する場合、遺言者が変更する箇所に二重線を引いて、その箇所に押印するだけで、一部削除の効力が生ずる。
  2. 自筆証書による遺言をする場合、遺言書の本文の自署名下に押印がなければ、自署と離れた個所に押印があっても、押印の要件として有効となることはない。
  3. 遺言執行者が管理する相続財産を相続人が無断で処分した場合、当該処分行為は、遺言執行者に対する関係で無効となるが、第三者に対する関係では無効とならない。
  4. 遺留分権利者は受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求でき、受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に遺留分侵害額を負担する。

正解 4

問題難易度
肢114.6%
肢27.8%
肢334.4%
肢443.2%

解説

  1. 誤り。自筆証書遺言中の加除その他の変更は、遺言者が変更する箇所に二重線を引いて、その箇所に押印するだけでは効力を生じません。自筆遺言証書の内容を変更する場合、遺言者が、その変更部分を示し、変更した旨、変更内容を付記して署名し、かつ、その変更の場所に印を押す必要があります(民法968条3項)。
    自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
  2. 誤り。自筆証書遺言には押印をすることが形式要件となっていますが、民法上、押印する場所についての規定はありません(民法968条1項)。また、遺言書の自署名下に押印がなくとも、その遺言を入れた封筒の封じ目にされた押印があった場合に要件を満たすとする判例もあります(最判平6.6.24)。
    自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
    遺言者が、自筆証書遺言をするにつき書簡の形式を採ったため、遺言書本文の自署名下には押印をしなかったが、遺言書であることを意識して、これを入れた封筒の封じ目に押印したものであるなど原判示の事実関係の下においては、右押印により、自筆証書遺言の押印の要件に欠けるところはない。
    自筆証書遺言は、その本文をパソコン等で印字していても、日付と氏名を自書し、押印すれば、有効な遺言となる。H22-10-1
  3. 誤り。遺言執行者が管理する相続財産について相続人が無断で行った処分行為は、遺言の執行を妨げる行為に該当するため無効となります(民法1013条)。第三者に対しても無効を主張できますが、善意の第三者に対しては対抗できません。
    遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
    2 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
    3 前二項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。
  4. [正しい]。民法改正により、遺留分減殺請求権が遺留分侵害額請求権に変わり、遺留分権利者は侵害額に相当する金銭の支払いを請求できるようになりました(民法1046条1項)。受遺者・受贈者が複数いるときには、後に贈与が行われた人から順に請求することになっています。受遺者と受贈者があるときは受遺者が、受遺者が複数または受贈者が複数あるときは後に贈与があったものが先に負担します。なお、贈与が同時にされたときは目的の価額に応じて負担となります(民法1047条1項)。
    ※肢4は遺留分減殺請求を前提とした文章であったため、当サイト独自の肢に入れ替えてあります。
    遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
    Bは、遺留分に基づき侵害額を請求できる限度において、その目的の価額に相当する金銭による弁償を請求することができる。H20-12-4
したがって正しい記述は[4]です。