制限行為能力者(全10問中9問目)

No.9

自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
平成17年試験 問1
  1. 買主Bが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずにAとの間で売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から無効である。
  2. 買主Cが意思無能力者であった場合、Cは、Aとの間で締結した売買契約を取り消せば、当該契約を無効にできる。
  3. 買主である団体Dが法律の規定に基づかずに成立した権利能力を有しない任意の団体であった場合、DがAとの間で売買契約を締結しても、当該土地の所有権はDに帰属しない。
  4. 買主である未成年者Eが土地の購入につき法定代理人の同意を得ていると嘘をつき、Aがそれを信じて契約締結した場合であっても、Eは未成年者であることを理由に当該売買契約を取り消すことができる。

正解 3

問題難易度
肢120.9%
肢218.6%
肢355.5%
肢45.0%

解説

  1. 誤り。被保佐人が、不動産の権利の得喪のような財産上の重要な行為をするには、保佐人の同意を得なければなりません。同意を得ずに行ったときは、保佐人は当該行為を取り消すことができます(民法13条1項3号)。取消しをすることにより当初から無効だったとみなされるのであり、契約自体が無効となるわけではありません。
    被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

    三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
    被保佐人が、不動産を売却する場合には、保佐人の同意が必要であるが、贈与の申し出を拒絶する場合には、保佐人の同意は不要である。H28-2-2
    被保佐人については、不動産を売却する場合だけではなく、日用品を購入する場合も、保佐人の同意が必要である。H22-1-3
    被保佐人が、保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした土地の売却は、被保佐人が行為能力者であることを相手方に信じさせるため詐術を用いたときであっても、取り消すことができる。H20-1-4
    被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、保佐人は、当該意思表示を取り消すことができる。H15-1-4
  2. 誤り。意思無能力者が行った意思表示は当然に無効となります(民法3条の2)。取消しをしなくても当初から無効なので本肢は誤りです。
    法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
    意思能力を有しないときに行った不動産の売買契約は、後見開始の審判を受けているか否かにかかわらず効力を有しない。R3⑩-5-4
    本件約定の時点でAに意思能力がなかった場合、Bは、本件試験に合格しても、本件約定に基づき甲建物の所有権を取得することはできない。H30-3-4
    AB間の売買契約が、Aが泥酔して意思無能力である間になされたものである場合、Aは、酔いから覚めて売買契約を追認するまではいつでも売買契約を取り消すことができ、追認を拒絶すれば、その時点から売買契約は無効となる。H19-1-4
  3. [正しい]。法律によって作られた法人は権利能力を有しますが、法律の規定に基づかずに成立した権利能力を有しない任意団体には権利能力がないので法律行為をすることができません。もし任意団体で売買契約を結びたいのであれば代表者等の個人名義でする必要があります。よって、売買契約の効果は一切生じないこととなります。
  4. 誤り。未成年者が法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は、本人や法定代理人が後から取り消すことができます。ただし、未成年者が行為能力者であると信じさせるための詐術を用いた(嘘をついた)ときには、取り消すことができません(民法21条)。嘘をついた制限行為能力者の保護よりも取引の相手方の保護が優先されるべきだからです。
    制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
    被補助人が、補助人の同意を得なければならない行為について、同意を得ていないにもかかわらず、詐術を用いて相手方に補助人の同意を得たと信じさせていたときは、被補助人は当該行為を取り消すことができない。H28-2-4
したがって正しい記述は[3]です。