民法の規定及び判例(財産法) (全183問中87問目)

No.87

売主Aは、買主Bとの間で甲土地の売買契約を締結し、代金の3分の2の支払と引換えに所有権移転登記手続と引渡しを行った。その後、Bが残代金を支払わないので、Aは適法に甲土地の売買契約を解除した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
出典:平成21年試験 問8
  1. Aの解除前に、BがCに甲土地を売却し、BからCに対する所有権移転登記がなされているときは、BのAに対する代金債務につき不履行があることをCが知っていた場合においても、Aは解除に基づく甲土地の所有権をCに対して主張できない。
  2. Bは、甲土地を現状有姿の状態でAに返還し、かつ、移転登記を抹消すれば、引渡しを受けていた間に甲土地を貸駐車場として収益を上げていたときでも、Aに対してその利益を償還すべき義務はない。
  3. Bは、自らの債務不履行で解除されたので、Bの原状回復義務を先に履行しなければならず、Aの受領済み代金返還義務との同時履行の抗弁権を主張することはできない。
  4. Aは、Bが契約解除後遅滞なく原状回復義務を履行すれば、契約締結後原状回復義務履行時までの間に甲土地の価格が下落して損害を被った場合でも、Bに対して損害賠償を請求することはできない。

正解 1

解説

  1. [正しい]。契約を解除した者は、登記を具備した解除前の第三者に対抗することはできません。なお、この場合の第三者は登記を具備していれば、悪意であっても所有権を取得します(民法545条1項最判昭33.6.14)。
    当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
    甲乙間になされた甲所有不動産の売買が契約の時に遡つて合意解除された場合、すでに乙からこれを買い受けていたが、未だ所有権移転登記を得ていなかつた丙は、右合意解除が信義則に反する等特段の事情がないかぎり、乙に代位して、甲に対し所有権移転登記を請求することはできない
  2. 誤り。目的物を使用して得た収入がある場合には、契約解除に伴う原状回復義務の一環として、それを返還しなければなりません(最判昭51.2.13)。
    売買契約に基づき目的物の引渡を受けていた買主は、民法五六一条により右契約を解除した場合でも、原状回復義務の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還しなければならない。
  3. 誤り。代金返還義務と原状回復義務とは同時履行の関係であるため、同時履行の抗弁権の主張が可能です(民法533条民法546条)。
    双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
    第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。
  4. 誤り。契約締結後、原状回復義務履行時までの間に目的物の価格が下落し、損害を負った場合、解除のみならず損害賠償請求も可能となります(民法545条3項)。
    解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
したがって正しい記述は[1]です。