民法の規定及び判例(財産法) (全183問中80問目)

No.80

民法第95条本文は、「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。」と定めている。これに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
出典:平成21年試験 問1
  1. 意思表示をなすに当たり、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
  2. 表意者自身において、その意思表示に瑕疵(かし)を認めず、民法第95条に基づく意思表示の無効を主張する意思がない場合は、第三者がその意思表示の無効を主張することはできない。
  3. 意思表示をなすについての動機は、表意者が当該意思表示の内容とし、かつ、その旨を相手方に明示的に表示した場合は、法律行為の要素となる。
  4. 意思表示をなすについての動機は、表意者が当該意思表示の内容としたが、その旨を相手方に黙示的に表示したにとどまる場合は、法律行為の要素とならない。

正解 4

解説

錯誤とは、「甲土地」を売るつもりだった売主が、その意思に反して「乙土地」を売ると買主に表示してしまった場合、金銭の単位を書き間違えてしまった場合のように、表意者の意思表示に無意識的な誤りがあったことを言います。錯誤には「要素の錯誤」と「動機の錯誤」があり、要素の錯誤では表意者は無効を主張できますが、動機の錯誤の場合には無効を主張できません。
  1. 正しい。民法95条の但し書きでは、「ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。」としています(民法95条)。
    意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
  2. 正しい。表意者自身が意思表示の瑕疵を認めていない場合、第三者が無効を主張することはできません(最判昭40.9.10)。
    表意者自身において要素の錯誤による意思表示の無効を主張する意思がない場合には、原則として、第三者が右意思表示の無効を主張することは許されない。
  3. 正しい。動機の錯誤は、表意者が動機を意思表示の内容とし、かつ明示的又は黙示的に表示した場合に限り、法律行為の要素となります(最判昭27.7.18)。
    意思表示の動機に錯誤があつても、その動機が相手方に表示されなかつたときは、法律行為の要素に錯誤があつたものとはいえない。
    本肢は、表意者が相手方に明示的に表示しているので要素の錯誤となります。
  4. [誤り]。動機の表示が、しぐさなどの黙示的な性質であったとしても、事実関係によっては法律行為の要素となることがあります(最判平1.9.14)。
    協議離婚に伴い夫が自己の不動産全部を妻に譲渡する旨の財産分与契約をし、後日夫に二億円余の譲渡所得税が課されることが判明した場合において、右契約の当時、妻のみに課税されるものと誤解した夫が心配してこれを気遣う発言をし、妻も自己に課税されるものと理解していたなど判示の事実関係の下においては、他に特段の事情がない限り、夫の右課税負担の錯誤に係る動機は、妻に黙示的に表示されて意思表示の内容をなしたものというべきである。
したがって誤っている記述は[4]です。