制限行為能力者(全10問中8問目)

No.8

行為能力に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
平成20年試験 問1
  1. 成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。
  2. 未成年者が、その法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は、無効となる。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りではない。
  3. 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者につき、四親等内の親族から補助開始の審判の請求があった場合、家庭裁判所はその事実が認められるときは、本人の同意がないときであっても同審判をすることができる。
  4. 被保佐人が、保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした土地の売却は、被保佐人が行為能力者であることを相手方に信じさせるため詐術を用いたときであっても、取り消すことができる。

正解 1

問題難易度
肢176.5%
肢25.6%
肢310.2%
肢47.7%

解説

  1. [正しい]。成年被後見人は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」をいいます。「常況」とは普段そのような状態であるという意味であり、一時的に事理弁識能力を回復することも当然に想定されています。したがって、成年被後見人が事理弁識能力を有するときに行われたものだとしても、本人又は成年後見人は取り消すことができます。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については取消しの対象外です(民法9条)。
    成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
    成年被後見人が第三者との間で建物の贈与を受ける契約をした場合には、成年後見人は、当該法律行為を取り消すことができない。H26-9-1
    成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。H15-1-3
  2. 誤り。無効ではなく取消しの対象です。原則として、未成年者が法定代理人の同意を得ずにした行為は取り消すことができます。取消すことができる行為は、取り消すまでは有効で取消しにより無効となります(民法5条)。
    未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
    2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
    3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
    本件売買契約締結時にAが未成年者であることにつきCが善意無過失であった場合、Bは、Aの制限行為能力を理由として、本件売買契約を取り消すことはできない。R5-8-2
    本件売買契約につき、Bが追認しないまま、Aが成年に達する前にBの同意を得ずに甲建物をDに売却した場合、BがDへの売却について追認していないときでも、Aは制限行為能力を理由として、本件売買契約を取り消すことはできなくなる。R5-8-4
  3. 誤り。本人の同意が必要です。補助開始の審判は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見(保佐)人、後見(保佐)監督人、検察官が請求することができます。補助開始の審判を受けるのは事理弁識能力が不十分な者とされており、一定程度の判断能力があるため、本人の意思を尊重するために、本人以外からの請求である場合は本人の同意が要件とされています(民法15条2項)。
    本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
  4. 誤り。取り消すことはできません。不動産等の重要な財産の売買には保佐人の同意が必要であるため、同意を得ずに売買をしたときは取り消すことができます(民法13条1項3号民法13条4項)。ただし、被保佐人が詐術を用いたときは取り消すことができません(民法21条)。
    不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
    保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
    制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
    被保佐人が、不動産を売却する場合には、保佐人の同意が必要であるが、贈与の申し出を拒絶する場合には、保佐人の同意は不要である。H28-2-2
    被保佐人については、不動産を売却する場合だけではなく、日用品を購入する場合も、保佐人の同意が必要である。H22-1-3
    買主Bが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずにAとの間で売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から無効である。H17-1-1
    被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、保佐人は、当該意思表示を取り消すことができる。H15-1-4
したがって正しい記述は[1]です。