民法の規定及び判例(財産法) (全183問中77問目)

No.77

民法第423条第1項は、「債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。」と定めている。これに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
出典:平成22年試験 問7
  1. 債務者が既に自ら権利を行使しているときでも、債権者は、自己の債権を保全するため、民法第423条に基づく債権者代位権を行使することができる場合がある。
  2. 未登記建物の買主は、売主に対する建物の移転登記請求権を保全するため、売主に代位して、当該建物の所有権保全登記手続を行うことができる場合がある。
  3. 建物の賃借人は、賃貸人(建物所有者)に対し使用収益を求める債権を保全するため、賃貸人に代位して、当該建物の不法占有者に対し当該建物を直接自己に明け渡すよう請求できる場合がある。
  4. 抵当権者は、抵当不動産の所有者に対し当該不動産を適切に維持又は保存することを求める請求権を保全するため、その所有者の妨害排除請求権を代位行使して、当該不動産の不法占有者に対しその不動産を直接自己に明け渡すよう請求できる場合がある。

正解 1

解説

  1. [誤り]。債務者自身が自らが、既に権利を行使している場合は、債権者代位権を行使することはできません(最判昭28.12.14)。
    債務者がすでに自ら権利を行使している場合には、その行使の方法または結果の良いと否とにかかわらず、債権者は債権者代位権を行使することはできない。
  2. 正しい。買主は、売主に代位して、当該建物の所有権保全登記手続を行うことができる場合があります(大判大5.2.2)。
  3. 正しい。本肢のような場合、賃借人は、賃貸人に代位して、当該建物の不法占有者に対し当該建物を直接自己に明け渡すよう請求できる場合があります(最判昭29.9.24)。
    建物の賃借人が、賃貸人たる建物所有者に代位して、建物の不法占拠者に対しその明渡を請求する場合には、直接自己に対して明渡をなすべきことを請求することができる。
  4. 正しい。抵当権者は、競売価格の低下を防止するなどの理由から、所有者を代位行使して、不法占有者に対しその不動産を直接自己に明け渡すよう請求できる場合があります(最判平11.11.24)。
    第三者が抵当不動産を不法占有することにより、競売手続の進行が害され適正な価額よりも売却価額が下落するおそれがあるなど、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、抵当不動産の所有者に対して有する右状態を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を保全するため、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができる。
したがって誤っている記述は[1]です。