民法の規定及び判例(財産法) (全183問中26問目)

No.26

次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。
(判決文)
契約の一方当事者が、当該契約の締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には、上記一方当事者は、相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき、不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別、当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはないというべきである。(中略)上記のような場合の損害賠償請求権は不法行為により発生したものである(略)。
出典:平成28年試験 問9
  1. 信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権は、買主が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効により消滅する。
  2. 信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権は、損害を被っていることを買主が知らない場合でも、売買契約から10年間行使しないときは、時効により消滅する。
  3. 買主に対して債権を有している売主は、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害陪償請求権を受働債権とする相殺をもって、買主に対抗することができない。
  4. 売主が信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった場合、買主は、売主に対して、この説明義務違反を理由に、売買契約上の債務不履行責任を追及することはできない。

正解 2

解説

要点は、説明義務に違反して、相手に損害を与えた場合、損害を受けた側には(債務不履行ではなく)不法行為に基づく損害賠償権が生じるということです。
  1. 正しい。不法行為に基づく損害賠償請求権は、買主が損害及び加害者を知った時から3年間または不法行為のあったときから20年間行使しないと消滅します(民法724条)。
    不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
  2. [誤り]。不法行為による損害賠償請求権は、不法行為の時から20年を経過した場合に、時効によって消滅します(民法724条)。
    よって、10年で消滅するとしている本肢は誤りです。
  3. 正しい。不法行為による損害賠償請求権を受働債権とする相殺は禁止されています(民法509条)。
    本肢では、買主側の損害賠償請求権が受動債権となるので相殺できません。
    債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
  4. 正しい。判例中の「債務の不履行による賠償責任を負うことはない…」の部分から、説明義務違反の場合、不法行為に基づく賠償責任を負うことはありますが、債務不履行による賠償責任は負わないとわかります。
したがって誤っている記述は[2]です。